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「会社を”守る”M&A、”伸ばす”M&A」|編集部おすすめの1冊

※この記事は公開から1年以上経っています。
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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

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会社を”守る”M&A、”伸ばす”M&A 三宅 卓著 日本経済新聞出版

2020年の企業倒産件数は前年比7.3%減の7773社。30年ぶりに8000件を下回った。「え?コロナ禍で経営環境は厳しかったのでは?」と疑問に思われるかもしれない。これは国や自治体が手厚い資金繰り支援を実施したため、業績不振の企業も生き残れたからだ。

会社を守るM&A、伸ばすM&A

しかし、コロナ禍は確実に企業を蝕(むしば)んでいる。ここにもう一つの数字がある。同14.6%増の4万9608件。これは国内の休廃業・解散件数だ。しかも、その6割が黒字企業だったという。なぜか?その理由を分かりやすく解説し、具体的な解決策を提示している。

理由は二つある。一つは経営者の高齢化だ。国内中小企業経営者の平均年齢は60歳を超え、平均引退年齢は70歳に達している。おまけにその歳になっても子供が家業を継がない、従業員も引き継げないなど後継者が見つからないケースも増えている。たとえ黒字であろうが、次の経営者がいないのなら休廃業するしかない。

もうひとつは日本の人口減少だ。人口が減れば、当然ながらマーケット(市場)は縮小していく。市場が縮小すれば、成長は止まり現状を維持することすら難しくなる。将来の発展が見込めないとなると、今は黒字でも「行き詰まる前に休廃業を選ぶ」動きが加速するのも当然だろう。

そこで解決策として提示されるのがM&Aだ。黒字企業であればM&Aで「買い手」が現れる可能性は高く、M&Aで経営規模が拡大すれば、マーケットが縮小しても生き残る可能性が高くなる。本書は一言でいえば中小企業経営者向けの「M&Aのすすめ」だ。

著者はM&A仲介国内トップの日本M&Aセンターを創業した三宅卓社長だ。本書は国内M&Aの成約件数の推移やM&Aの基礎知識、M&Aを支援する業界や政府の動向、M&Aの流れなどを平易に説明する「M&Aの入門書」といえる。

しかし、圧巻は同社が成立させた6件のM&Aについての個別ストーリーだ。事業承継に悩む企業がM&Aを選択し、それを実現した企業の内幕と決断の舞台裏を実名で紹介している。

本書のターゲット読者となる事業承継に悩む経営者にとっての指南書であることはもちろん、50代以下の「働き盛り」経営者が自社の将来戦略を構想する参考書、経営者の生き様を知る優良なドキュメンタリーとして、読者を選ばない誰にでも役に立つ1冊だ。(2021年11月発売)

文:M&A Online編集部

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