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「バベルの塔の人々」|編集部おすすめの1冊

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

「バベルの塔の人々」山西均 著、幻冬舎 刊

主人公の秋月は国内証券最大手、武蔵証券のグローバル人事部長を務める。債券の営業畑を歩み、キャリアの半分は海外勤務。間接部門の人事は入社20年にして初めての経験で、出世コースから外されたと感じている。「武蔵証券、ウォールストリート証券の救済で名乗りか」。よもや、こうした観測記事が嵐の到来を告げることになるとは……。

バベルの塔の人々

ウォールストリート証券は世界5位の米投資銀行。しかし、サブプライムローン(低所得者向け住宅ローン)問題に端を発する巨額損失で経営破綻し、100年に一度とまで言われる金融危機の引き金になった。その渦中で、武蔵証券社長の山本が決断したのがウォールストリートの事業買収。一気にグローバル化を進め、欧米の大手金融機関と肩を並べるのが狙いだ。

武蔵証券はウォールストリートの日本を含む全地域の社員1万5000人を引き継ぐこととなった。その数は半端ではない。主幹部署としてグローバル人事部を率いる秋月には目が回るような忙しい日々が訪れる。

能力本位が貫かれる欧米の金融機関で優秀な社員はポストや高額報酬を求めて、会社を渡り歩くのが常。一方、業績目標を達成できなければ、雇用契約は打ち切られる。終身雇用を前提とした日本の人事制度とは相いれない。しかも、文化や言語の壁が立ちはだかる。

華やかな経営統合の舞台裏で秋月たちは苦悩と戦いながら、進むべき道を模索する。果たして、その「解」とは。また、武蔵証券としてウォールストリート買収は成功というべき成果を生み出したのか。読んでみてのお楽しみだ。

本書の下敷きとなった出来事は2008年のリーマンショックにほかならない。金融危機の最中、野村証券は破綻した米リーマン・ブラザーズの欧州・中東、アジアの事業部門を傘下に収めた。この際、リーマンから約8000人の社員が移籍した。

実は、著者の山西均さんは野村出身。リーマン買収時、人事部門の長の一人として歴史的な統合劇に携わった。その氏が本格経済小説に挑んだ。(2022年1月発売)

文:M&A Online編集部

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