数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。
「創世の日」江上剛 著、朝日新聞出版 刊
「伊地知海弥さんの日記が見つかりました」。戦後、占領下の日本から米国に渡って70年以上となるアヤノ・エリアス・ジョンソンのもとに一通の電子メールが届いたことから、物語が幕を開ける。日記は、旧花浦邸の地下通路のとある場所に残されていたという。
1945年の第2次世界大戦後、GHQ(連合国軍総司令部)の占領政策の一つが経済民主化を旗印とした財閥解体。侵略戦争に加担したと見なされたのだ。三井、住友、安田などと並ぶ巨大財閥、花浦も存亡の危機を迎える。
日記の主の伊地知は花浦家の執事。花浦財閥の総帥である久兵衛に仕えて60年となる。日記に頻繁に登場する少女がアヤノだ。日本名は花浦綾乃。米国人の父親と日本人女性の間に産まれた私生児だが、久兵衛夫妻が引き取り、お嬢様として育てられる。
戦争によって運命を翻弄される花浦財閥、花浦家、久兵衛、綾乃…。伊地知を語り部とし、物語が進行する。東条英機、吉田茂、マッカーサーらとの関わりもリアルに描かれる。
花浦財閥は明治維新後、久兵衛の父親が創業した海運業を基礎として日本を代表する企業集団となった。つまりは、「三菱」が花浦財閥のモデルということになる。
財閥解体に立ち会うことになった久兵衛が苦悩の末に下した決断とは。財産を没収されても、それでも終始案じるのが祖国の未来。
「もし花浦が無くなろうとも花浦の種が良き種であったら、また芽吹き、根を張り、花が咲き、実をつけるだろうよ」と久兵衛は花浦と祖国の“創世(はじまり)の日”に思いをはせる。
花浦邸は接収され、GHQ参謀第二部のキャノン中佐が率いる一団(キャノン機関)に明け渡す。傍若無人に振る舞う一団に、敢然と向き合うのは他でもない綾乃。幼さが残るが、美しく、胸を張り、堂々と話す姿には威厳さえ漂う。(2022年1月発売)
文:M&A Online編集部
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