「なぜ、おばちゃん社長は価値ゼロの会社を100億円で売却できたのか」|編集部おすすめの1冊
企業価値ゼロの会社を引き継いだ著者が、わずか10年で大手ベアリング会社などに同社を103億円で売却するまでに価値を高めた手法や、心がまえ、ノウハウなどがぎっしりと詰め込まれている。
数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。
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「これからのお金のつかみ方」 増田 裕介 著、主婦の友社刊
「お金のつかみ方」にも、いろいろある。株式や不動産投資といった財テクから企業経営、はたまた宝くじやギャンブルまで多種多様だ。本書が指南する「お金のつかみ方」は、中小企業を起業して売り抜けること。M&A用語でいえば「バイアウト」の解説書である。
「そんなことは夢物語で、実現の可能性はほとんどない。宝くじでも買った方がマシ」とはいえない。かつては霞が関の官僚や大企業の社員になるのが当たり前だった東京大学の卒業生も、近年は「優秀な者は起業家を目指す」といわれている。
2020年7月に東大が発表した「世界をリードするスタートアップ拠点都市の形成と経済好循環の駆動~東京大学の取組み~」によると、東大関連スタートアップは401社あり、うち17社が新規上場(IPO)を果たしている。それらの上位5社だけで、時価総額は約1兆円に達するという。
彼らが起業を目指すのはIPOやバイアウトに成功すれば、官僚や大企業社員(たとえ事務次官や社長になったとしても)の生涯賃金をはるかに超えるお金を、早ければ20代のうちに手にすることができるからだ。
もちろん高学歴でなければ起業に成功しないわけではない。倒産した東大発ベンチャーもあるし、高卒の前澤友作氏は国内最大のファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を成功させた。難易度は高いとはいえ、誰でもスタートアップで「一攫千金」を狙うことができるのだ。
本書では起業から経営の安定、成長までの手順を「新規事業をつくる技術」「資金をつくる技術」「ブランディングの技術」「売り上げをつくる技術」と順を追って紹介していく。「売り上げをつくる技術」では、マスメディアに取り上げられるための手法にまで踏み込んで丁寧に説明している。
そして、最終章がお金をつかむ「会社を高く売る技術」だ。売上高・利益・成長力は当然として、従業員の管理レベルは維持されているか、定着率は著しく低くないか、キーマンとなっている人材がM&A後も継続して働いてくれるのか、社長がいなくても会社が回る「仕組み化」ができているかなどの留意点を取り上げている。
その上で自社の売却価格の算定法や、投資ファンド・上場企業・未上場企業といった譲渡先別の注意点、M&Aアドバイザーの活用法などを紹介して本書は終わる。本書の特徴は起業から経営、バイアウトまでの流れを1冊でまとめていることだ。
本書の冒頭で著者は最初にゴールを設定し、そのために何をする必要があるのかを考える「逆算思考」を推奨している。その意味では、起業からバイアウトまでを1冊でまとめたのは当然かもしれない。
類書のほとんどは「起業」「経営」「バイアウト」の段階ごとにテーマを絞っている。それに比べて本書はそれぞれの詳しい内容にまで踏み込めていない印象はあるが、全体を俯瞰(ふかん)するには最適の1冊といえるだろう。( 2021年3月発売)
文:M&A Online編集部
企業価値ゼロの会社を引き継いだ著者が、わずか10年で大手ベアリング会社などに同社を103億円で売却するまでに価値を高めた手法や、心がまえ、ノウハウなどがぎっしりと詰め込まれている。
今回取り上げるのは江上剛著「再建の神様」(PHP研究所感刊)。物語の舞台は倒産の危機に瀕する会津の温泉旅館。銀行員生活に挫折した春木種生は東北新幹線の車中で、再建請負人を名乗る渋沢栄二と偶然出会う。
有名企業が倒産に至った経緯をまとめたのが本書。信用調査会社である帝国データバンクがまとめた。タイトルに「まんが図解」が入っているが、まんがの部分は少なく、いわゆる漫画本とは趣を異にする。
事業承継は中小企業にとって最も差し迫った問題だ。そうした中、突如襲来した「新型コロナ禍」。コロナ後を見据えて、事象承継問題にどう向き合うべきか、豊富な実務経験をもとにレクチャーする。