「Exit(イグジット)」|編集部おすすめの1冊
超金融緩和政策に危機感を持つ日銀OBが、日銀と政府の経済政策を批判し、新たな提言を打ち上げる。こうした行為をクーデターと呼び、クーデターに協力する者、クーデターを抑えようとする者たちの攻防を描いた。
数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。
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『経営者こそ投資家である 企業価値創造のためのキャピタル・アロケーション』 手島 直樹著、日本経済新聞出版刊
予め断っておくと、本書は経営者に株式投資を推奨する本ではない。経営者が「投資家の視線」で会社を動かすべきだとの視点で書かれている指南書だ。
コロナ・ショック後の企業価値をどう向上していくかというテーマの下、フリーキャッシュフローの創出や投資の判断、株主への還元、資金調達などについて、具体的な事例を紹介しつつ分かりやすく解説している。
特筆すべきはM&Aだ。市場の変化に対応するため、企業は常に事業ポートフォリオを見直さなくてはいけない。そこで重要な役割を果たすのがM&Aだ。しかし、マスメディアで大きく伝えられるM&Aには失敗が少なくない。
著者の「M&A必勝法」は極めてシンプル。多数のM&Aを成功させた「M&A巧者」の戦略を学ぶべきだという。それだけだ。M&Aの成否を分ける要員は「経験」「買収先の規模」「既存事業との関連性」の三つ。
ベストな戦略は「既存事業との関連性」が高く、「買収先の規模」が小さい案件を、多数買収して「経験」を積むこと。その上で難易度の高い異業種企業をターゲットにしたり、大型買収に手を出すべきだという。
M&Aの失敗事例の多くは「高値づかみ」であることをデータから明らかにし、オークションで想定の買収金額を上回った場合は潔く諦める勇気を持つことも重要だと説く。理想は売り手企業から「ぜひ御社に買ってほしい」と言ってもらえる買い手企業になること。
さらにM&Aは買収完了で終わりではなく、その後のPMI(合併・買収後の統合プロセス)が成否を分ける。統合初日から成果を出せるよう、できるだけPMI作業を前倒しすることが重要。統合後の2年間でシナジー目標を達成した企業は、4年以上かかる企業よりもM&Aの成功確率が2.6倍になるという。M&Aはスピード勝負なのだ。
M&Aに関係する章だけでも読む価値はある。経営者のみならず個人投資家や企業財務・戦略に関心のある人におすすめの一冊だ。(2020年12月発売)
文:M&A Online編集部
超金融緩和政策に危機感を持つ日銀OBが、日銀と政府の経済政策を批判し、新たな提言を打ち上げる。こうした行為をクーデターと呼び、クーデターに協力する者、クーデターを抑えようとする者たちの攻防を描いた。