「銀行主導にさせない事業承継のススメ」|編集部おすすめの1冊

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

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「銀行主導にさせない事業承継のススメ」谷 敦 著、幻冬舎 刊

大阪で機械加工工場を運営する中小企業が、事業承継策として銀行提案のホールディングス化を受け入れ、20億円もの借金を背負ってしまい、その後の経済状況の変化で返済が計画通り進まなくなり、親子二代に渡って借金に苦しむことになった。

著者は経営者のための保険を取り扱う企業の代表で、この工場経営者や仲間の税理士らとのやり取りを通じて、この工場経営者がどのような経緯で苦境に陥ったのかを描いている。

「銀行はお金を貸すことが仕事であり、違法性はない」「銀行は社会的な信用があり、過去に融資を受けて恩を感じていることもあり、銀行に提案されるままに事業承継を進めてしまう」といった状況を踏まえ、「融資を受けて事業承継するしかない」と思い込んでいる社長に、セカンドオピニオンを提供し、銀行が提案する方法が唯一ではなく、他にも方法があることを示すのが本書の目的だ。

銀行主導にさせない事業承継のススメ

このほかにも、退職金をもらって退職したはずの先代社長が、その後も経営に関わったため、当局に退職金として認められず、後継者に譲る予定の自社株に多額の贈与税が発生しそうになった事例や、社長の妻が、社長の死亡に伴う保険金を受け取れず、多額の相続税の負担を抱えたうえ、会社所有の住宅からも退去せざるを得なくなった事例など、著者が実際に経験した六つの事業承継にかかわるトラブルを紹介している。

これら事例を通じて中小企業の経営者に、事業承継に早期に取り組む必要性や、後継者や遺族が多額の贈与税や相続税に苦しまなくて済むための対策、相続争いを避けるための手法などを示している。

会話による表現を多く取り入れているため容易に読み進むことができ、トラブルに困惑している状況などが手に取るように分かる。事業承継手法の解説書ではなく、小説のような雰囲気を持つ。

著者は借金苦に陥った機械加工工場の経験のあと、中小企業の事業承継を支援する組織の必要性を感じ、2009年に特定非営利活動法人「役立つ士業協議会」を設立。現在も保険の取り扱いと並行してセミナーを通じた情報提供や個別の相談などに応じている。(2021年3月発売)

文:M&A Online編集部

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