2021年1月から3月に出版された「M&A関連本」をすべて紹介します
2021年も引き続きM&A関連本の発刊が相次いでいます。1月から3月の間だけで30冊近くの書籍やM&Aの特集記事を組んだ雑誌が発売されました。
数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。
「M&A失敗の本質」 人見 健 著、ダイヤモンド社 刊
M&Aの成功確率は洋の東西を問わず、3割程度という。日本企業でもM&Aが成長戦略の手段として定着して久しいが、7割は失敗に終わっているということになる。国境を越えるクロスボーダー(国際間)案件であれば、成功へのハードルはより高い。
何がM&Aの成否を分けるのか、日本企業は何をどう間違っているのか。その真因を解き明かし、課題解決への道筋を示したのが本書だ。
M&Aの失敗は好不況などの外部環境のせいでも、相手企業のせいでもない。つまるところ、失敗の原因は自社内にあると断言する。
具体的には①「M&Aありき」のあいまいな目的②リスクの楽観的バイアス(先入観)③自己保身的行動④結果責任意識の欠如⑤有事性の理解不足⑥自己流マネジメント方式(いわゆる組織風土・企業文化)の踏襲⑦経営者的思考の弱さ-の7点に集約されるという。
M&Aの目的があいまいなまま、「シナジー(相乗効果)がありそうだ」というだけで買収すれば、どうなるか。結果として親会社の戦略浸透や方針徹底がしにくくなり、子会社もグループ入りしたメリットが得られず、親会社との関係が悪化することになりかねない。
買い手側の経営者に往々にして見られるのがM&Aは実行したら終わりという考え方。買収が完了すると、経営者の関心が低下することがある。これが「結果責任意識の欠如」「有事性の理解不足」を招くというわけだ。
トップの関与が薄ければ、買収後の統合プロセス(PMI)は事業部任せとなる。子会社にはトップの顔が見えない(ボスが誰だか分からない)ことにより、親会社への帰属意識が生まれない。
著者は現在、NTTデータ経営研究所パートナー。これまで300件以上のM&Aの戦略立案・実行、PMIにかかわり、豊富な実務経験をバックボーンとする。M&Aを成功に近づけるための手がかりが詰まった1冊だ。(2021年3月発売)
文:M&A Online編集部
2021年も引き続きM&A関連本の発刊が相次いでいます。1月から3月の間だけで30冊近くの書籍やM&Aの特集記事を組んだ雑誌が発売されました。