フェイスブックはワッツアップのほかにも、本体の「フェイスブック」や「インスタグラム」といった人気アプリがあり、SNSでは圧倒的な影響力を持つ。ワッツアップもフェイスブックグループの成長を支える「優等生」ではあるが、フェイスブックやインスタグラムが高いシェアを持つアジアでは弱い。
ワッツアップもアジアでの普及を意識してか、2018年にLINE人気を押し上げたスタンプ機能を追加したほか、「LINE Pay」のような電子決済機能に対抗して、インドで「UPI」という銀行間送金サービスをワッツアップ上に実装した送金サービス「WhatsApp Payment」を始めている。
2019年にもワッツアップがダウンロード件数世界一をキープするには、アジアでの普及が欠かせない。フェイスブックはアジアでの展開を狙って、ワッツアップで送金できる独自の仮想通貨の開発にも乗り出しているという。これはインドをはじめ、全国的な個人や中小企業向けの金融サービスが整備されていないアジア諸国では大きな競争力になるだろう。
ワッツアップはサービス画面で広告を表示していない。かつては有料サービスだったが、2016年1月からは無料化されており、どのような形で収益を上げるのかが注目されていた。さらにフェイスブックには、その名も「メッセンジャー」というメッセンジャーアプリがあり、ワッツアップとの「共食い」も懸念されている。
ワッツアップが仮想通貨による電子決済アプリ化すれば、金融手数料という収入源を手に入れると同時に「メッセンジャー」との棲み分けもできる。まさに一石二鳥だ。ワッツアップのアジア戦略が成功すれば、「フェイスブック帝国」は世界金融の領域にまで拡大することになる。それを阻止できそうなのは今のところLINEだけだ。
来る2019年には、ワッツアップ=フェイスブックとLINEとの「一騎打ち」が、アジア市場で火花を散らすことになるかもしれない。
文:M&A Online編集部