フェイスブックとLINEの命運を握る世界最多ダウンロードアプリとは?

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欧州では圧倒的シェアのメッセンジャー「WhatsApp」

2018年もいよいよ今日で終わり。今年、世界で最もダウンロード(DL)されたスマートフォン(スマホ)アプリは何だったか。ゲーム?音楽配信?それともフリマ(フリーマーケット)アプリ?

正解は「WhatsApp(ワッツアップ)」。アンドロイドとiOSで合計7億7900万件もダウンロードされたという。

LINEとは真逆!シンプルな操作性で人気を集める

ワッツアップは「LINE」のようなSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のメッセンジャーアプリで、日本でもダウンロードして利用はできるものの、知名度は今ひとつ。しかし、欧州な南米などでは高いシェアを持つ「メッセンジャーのスタンダード(標準)アプリ」だ。

日本では最もメジャーなメッセンジャーアプリのLINEと、基本的にできることは同じ。ただ、ワッツアップは機能がシンプルで、スマホの電話帳に登録している人が同アプリをインストールしていれば、アプリの発信先に自動登録される。LINEのような登録認証作業などは必要ない。

一方、LINEで楽しめるゲームや音楽ストリーミング、オンラインショッピングなどの付加機能は、ほとんどない。ワッツアップはエンターテインメント性を排除し、テキストメッセージや写真、動画の送受信、位置情報の共有などの通信機能に特化したミニマムなアプリといえる。

シンプルで簡単に使えるメッセンジャーアプリ「ワッツアップ」(同社ホームページより)

ワッツアップを開発したWhatsApp Incは、米Yahoo!出身のブライアン・アクトン氏とジャン・コウム氏が2009年に米カリフォルニア州サンタクララで創業。2014年に米フェイスブックが30億ドル相当の制限株式ユニット付与を加えた総額190億ドル(約2兆円)の巨額買収をしたことで、一躍有名になった。

ワッツアップは2016年2月にユーザー数が10億人を超えるなど、メッセンジャーアプリの「巨人」に育っている。その翌年の2017年にはダウンロード件数は9億2400万件に達し、世界で最もダウンロードされたアプリとなった。ダウンロード件数は頭打ちながら、2018年も世界最多ダウンロードアプリとなった。

「アジアで弱い」の汚名返上策が、実は次のステップアップ

フェイスブックはワッツアップのほかにも、本体の「フェイスブック」や「インスタグラム」といった人気アプリがあり、SNSでは圧倒的な影響力を持つ。ワッツアップもフェイスブックグループの成長を支える「優等生」ではあるが、フェイスブックやインスタグラムが高いシェアを持つアジアでは弱い。

「LINE PAY」の電子決済や「スタンプ」機能を実装してアジアでの普及を狙うワッツアップ(LINEホームページより)

ワッツアップもアジアでの普及を意識してか、2018年にLINE人気を押し上げたスタンプ機能を追加したほか、「LINE Pay」のような電子決済機能に対抗して、インドで「UPI」という銀行間送金サービスをワッツアップ上に実装した送金サービス「WhatsApp Payment」を始めている。

2019年にもワッツアップがダウンロード件数世界一をキープするには、アジアでの普及が欠かせない。フェイスブックはアジアでの展開を狙って、ワッツアップで送金できる独自の仮想通貨の開発にも乗り出しているという。これはインドをはじめ、全国的な個人や中小企業向けの金融サービスが整備されていないアジア諸国では大きな競争力になるだろう。

ワッツアップはサービス画面で広告を表示していない。かつては有料サービスだったが、2016年1月からは無料化されており、どのような形で収益を上げるのかが注目されていた。さらにフェイスブックには、その名も「メッセンジャー」というメッセンジャーアプリがあり、ワッツアップとの「共食い」も懸念されている。

ワッツアップが仮想通貨による電子決済アプリ化すれば、金融手数料という収入源を手に入れると同時に「メッセンジャー」との棲み分けもできる。まさに一石二鳥だ。ワッツアップのアジア戦略が成功すれば、「フェイスブック帝国」は世界金融の領域にまで拡大することになる。それを阻止できそうなのは今のところLINEだけだ。

来る2019年には、ワッツアップ=フェイスブックとLINEとの「一騎打ち」が、アジア市場で火花を散らすことになるかもしれない。

文:M&A Online編集部