スマホがガラケーを超えた2013年公開『パワー・ゲーム』 

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ビジネスパーソンが好みそうなテーマがてんこ盛り

『パワー・ゲーム』(2013年)は2大カリスマ経営者の対決、若手ダメ社員の逆襲、スマートフォン開発競争・・・と、ビジネスパーソンが好きそうなテーマを盛り込んだビジネス・サスペンス。

熾烈な争いを繰り広げる2大カリスマCEOにハリソン・フォードとゲイリー・オールドマン、2社間の競争に翻弄される若きダメ社員をリアム・ヘムズワースが熱演する。主人公の相手役は私生活でなにかと話題になるアンバー・ハード。ジョニー・デップとイーロン・マスクが見初めるのも頷ける可愛さだ。

あらすじ

ブルックリンに住むアダム(リアム・ヘムズワース)は、巨大IT企業「ワイアット社」に勤務する野心溢れる青年。昇給と出世をかけ、チームの仲間たちと練りに練った新製品の社内プレゼンに挑んだ。しかしCEOのワイアット(ゲイリー・オールドマン)に門前払いを食らったアダムは、腹いせに開発費を横領しチームのメンバーと豪遊。その夜にクラブで知り合ったエマ(アンバー・ハード)と一夜を過ごす。

横領を知ったワイアットはオフィスにアダムを呼び出し、横領罪で刑務所に入るか、ライバル社の「アイコン社」から新製品の情報を盗み出す産業スパイとして働くかの二択を迫る。クビになったチームメンバーの再雇用を盾に取られたアダムは、アイコン社への潜入を決意する。

ワイアットの手引きによりアイコン社の入社面談に臨んだアダム。その場にいたのは、アイコン社のマーケティング部長であるエマだった。不穏な空気が流れながらも、アダムは無事に入社。社内プレゼンでCEOのゴダード(ハリソン・フォード)に気に入られ、信頼を勝ち取る。

当初は警戒心を抱いていたエマも、やがてアダムと親密な関係に。一人の女性としてエマに好意を抱くアダムだったが、後ろめたさを感じつつ、エマのPCからアイコン社の新製品“オキュラ”の開発データを盗み出す。

しかしワイアットは、データではなく現物を盗み出せとアダムに命令する。今度は父親を人質にとられ、エマの携帯電話と指紋を盗みだし、オキュラが保管されるアイコン社の金庫室に侵入。しかしそこに現われたのはアダムがワイアットのスパイであると見抜いていたゴダードだった・・・。

移り行く師弟関係

ゴダードとワイアットは、かつては師弟ともいえるビジネスパートナーだった。「人々の生活を豊かにする製品を作るため」にワイアットを育てたというゴダード。作中のゴダードの発言からは、ワイアットへの「ライバルになってくれる」という期待と、子を千尋の谷へ落とす獅子のごとき愛情を感じる。

しかしワイアットの受け取り方は違っていた。ゴダードが成功を独り占めし、ワイアットが追い出される形で袂を分かつことになったという。時間の経過とともに価値観が合わなくなるのは、どのような人間関係でもいえることだ。

スマホ普及率がガラケーを超えた2013年

本作は2013年に公開。iPhoneは2012年に5、2013年に5s/5cが発売され、誰もがスマホを手にする時代へと突入していく。実際に2013年は世界で販売された携帯電話の半分以上がスマホとなった(ガートナー調べ)分岐点だった。

Facebook、Twitter、InstagramといったSNSが生まれ、人と人との関係が「物理的に離れていても精神的な繋がりを感じられる」ように変化していく。まさに作中でアダムが主張した「つながっていると思える個の状態」が広がりを見せた時代となった。

そのアダムの主張を否定的に捉えたワイアット。一方のゴダードは「個」の生活を充実させるため、最新鋭端末の開発に注力していた。両者の選んだ道を思い浮かべ、実在する企業の動向をイメージする人も多いだろう。

原作を106分に凝縮したため、作りが荒いところはあるが、ビジネスムービーが好きな人なら十分楽しめる。重厚さはないが、ストーリーを楽しみたい人は原作の文庫本「侵入社員(上)(下)」が出ているので、是非。

<作品データ>
原題:Paranoia / 邦題:パワー・ゲーム
原作:『侵入社員』ジョゼフ・フィンダー著
監督:ロバート・ルケティック
出演:リアム・ヘムズワース、ゲイリー・オールドマン、ハリソン・フォード、アンバー・ハード
2013年/アメリカ/106分

パワー・ゲーム
侵入社員

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