例年、この時期になるとアメリカで賞レースを賑わしている作品が海を渡ってきます。これは賞狙いの作品の印象をより強く残すため、アメリカで年末に劇場公開されることが多いためです。大作映画は日米同時公開されることがありますが、文芸作品となると日本の公開が遅れることが多いようです。
特に今年(2022年)の第94回アカデミー賞は、北京オリンピックやアメリカンフットボールのスーパーボウルとの競合を避けるため、例年と比べて1か月遅れの3月27日開催となり、それに合わせて関連作品の日本公開も後ろ倒しになっています。
日本の3月公開映画ですが、アカデミー賞が例年より1か月遅れの開催となったことで、大作やアニメーションなどもバリエーション豊かな並びになっています。
今回も筆者おすすめのの5作品を公開日順に紹介します。
難病を発症し余命10年となった茉莉と居場所を失った青年・和人の恋と成長の物語。ヒロインと同様に難病を患い余命10年を生きた小坂流加の同題小説を話題作続く藤井道人監督が映画化。主役の二人を小松菜奈と坂口健太郎が演じています。
原作小説の設定はそのままに映画オリジナルの物語が描かれるので、原作を読まれている方でも新鮮な印象を感じることができる映画になっています。
『君の名は。』『天気の子』で映画音楽を手掛けてきたRADWIMPSが初めて実写映画の映画音楽を担当したことも話題になっています。
映画『余命10年』オフィシャルサイト|2022年3月4日公開 (warnerbros.co.jp)
ご存知、アメリカンコミックスの人気ヒーローの「バットマン」を新たに描く超大作。
ティム・バートン監督版から始まる4作品、クリストファー・ノーラン監督による“ダークナイト3部作”、そしてベン・アフレックが演じたバットマンといったそれぞれの流れを受けたうえで、さらに2019年の『ジョーカー』の影響が色濃く今までにないハードテイストな作品となっています。
もともとはベン・アフレックが監督・製作・脚本・主演を務めることで企画が進んでいましたが、監督がマット・リーヴスに変わり、若き日のバットマンの物語になることに。ベン・アフレックが完全に降板し、『トワイライト』シリーズのロバート・パティンソンが主役に抜擢されました。
映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』オフィシャルサイト (warnerbros.co.jp)
お笑い芸人としてだけでなく『劇場版架空OL日記』『地獄の花園』などの映画で脚本を担当してきたバカリズムが新たにオリジナル作品として脚本を書き上げたのが本作。篠原涼子、中村倫也、岩田剛典、向井理などなど豪華キャストが揃いました。
監督は松岡茉優主演の『勝手にふるえてろ』、のん主演の『私をくいとめて』などの個性派・大九明子監督。
一組のカップルの結婚式を、時間と視点を巧み入れ替えて、複数の角度から描き、結婚式の裏と表のバタバタを描くコメディ作品となっています。
映画『ウェディング・ハイ』公式サイト | 2022年3月12日(土)ROADSHOW (shochiku.co.jp)
『ホビット』や『パシフィック・リム』と言った超大作を手掛ける一方で、『パンズ・ラビリンス』や『シェイプ・オブ・ウォーター』で賞レースを賑わし、『シェイプ・・・』でアカデミー賞監督賞・作品賞を受賞した鬼才ギレルモ・デル・トロ監督の待望の最新作。
20世紀半ばのショービジネス界の光と影を独自のタッチで描きだします。
ブラッドリー・クーパー、ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラなどアカデミー賞の受賞、ノミネート歴が豊富な豪華キャストが集結した幻想的なダークサスペンス映画に仕上がっています。
ナイトメア・アリー|映画|サーチライト・ピクチャーズ (searchlightpictures.jp)
俳優として、監督として『オリエント急行殺人事件』や『ナイル殺人事件』など多くの名作・話題作を手掛けてきたケネス・ブラナーが自身の体験をもとにした半自伝的作品。
北アイルランドのベルファストに暮らす少年のバディは家族や近所の人々に囲まれて穏やかな生活を送っていました。しかし、カトリック系住民とプロテスタント系住民の間で争いが激化、ベルファストの街が分断されていきます。
アカデミー賞受賞の『ノマドランド』や『グリーンブック』など多くの有力作品を送り込んでいるトロント国際映画祭で2021年の最高賞(観客賞)を受賞しました。第94回アカデミー賞でも7部門でノミネートされ、アカデミー賞が有力視されています。
映画『ベルファスト』オフィシャルサイト 2022年3月25日公開 (belfast-movie.com)
昨年(2021年)のアカデミー賞授賞式は新型コロナ対策で会場を分散するなどの影響もあり、盛り上がりに欠けた結果、米視聴率は過去最低だったとか。今年の授賞式はどうなるのでしょうか。
文:村松健太郎(映画文筆家)/編集:M&A Online編集部