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「盗油」の暗闘を描いた韓国映画『パイプライン』が公開

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© 2021 [CJ ENM, GOM PICTURES, M.o.vera Pictures] All Rights Reserved.

2月4日公開『パイプライン』

送油管(パイプライン)に穴を開けて石油を盗み転売する特殊犯罪「盗油」を韓国映画で初めて正面から取り上げ、話題を集めたアクション・エンターテインメント映画『パイプライン』が、2月4日から公開される。

主演は『君に泳げ!』以来、8年ぶりに映画復帰を飾ったソ・イングク。犯罪組織のリーダーを担う腕の立つ穿孔技術者を演じた。

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マルチュク青春通り』、『江南ブルース』など韓国の現実を鋭く捉えながらも、人間の繊細な内面を表現してきたユ・ハ監督が脚本も担当。実際に地下道を掘って送油管や下水溝のセットを作り、撮影を敢行した意欲作である。

<あらすじ>

手作りのドリルで送油管に穴を穿(うが)つ技術力によって、「盗油」の世界でその名を轟かせていたビンドリが、数千億ウォン相当の石油を盗むという精油会社の代表ゴヌの提案を拒めず、危険極まりない作戦に合流することになった。

集められたのは溶接工の“チョプセ”、透視できるかのように地中を把握している“ナ課長”、怪力の人間掘削機“ビッグショベル”、そしてゴヌの指示で彼らを監視する“カウンター”という一癖も二癖もありそうな面々。ビンドリのもとで作戦は始まったが、異なる目的を持つ者たちが騙し騙されながら、計画は予想外の方向に迷走する…

地中の世界をリアルに見せるために美術担当や撮影陣が奮闘

上下水道、電気、通信、ガス……。地面の下にはさまざまな管路が埋設されている。この映画の主役である送油管もその一つ。

本作のストーリーのほとんどは、地下の坑道や共同溝といった暗く狭い場所で展開される。撮影にあたって制作陣が力を注いだのが、美術と撮影だという。まず美術担当はリアリティーを求めて多くの場所を実際に掘り返し、地下道や下水溝のセットを作りあげた。ライティングにも工夫を凝らし、地下の暗さを表現しつつ出演者の表情が闇に沈み込まないようバランスをとった。地中の世界が見事にスクリーンに現出した。

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ビンドリ率いる盗油チームとゴヌの手下たちが地下で繰り広げる追跡劇や格闘シーンも本作の見どころの1つ。狭い地下道や、人ひとりが屈みながらやっと通れる窮屈な下水溝などでの撮影では、手持ちカメラが活躍。スピード感や迫力に富んだ映像を生み出している。

撮影監督のハ・ギョンホは、こう語っている。

ーー「限定された空間で多数の俳優たちが演技しなければならず、映画の統一感を考えた時、当然、手持ちカメラの技法が浮かんだ。力強くも自由な画面にするのが重要なために、最大限多くのカットをすばやく撮り、途中で精巧さが必要な部分を別途撮影した」

ピンドリが穿孔する作業を観客にリアルに見せるための撮影も大きな課題だったようで、「ドリルの刃が出入りする細いパイプ内を撮るのは一般レンズでは不可能なので、長い棒状のLaowa24mmレンズを使用して、立体的でダイナミックなカットを作り出すよう努力した」(ハ・ギョンホ)という。

地下空間という見えない世界をいかにリアルに見せるか。撮影面の創意工夫に感心させられる。

映画のテーマ曲には60年代のあのヒット曲が

ビンドリ役のソ・イングクとゴヌ役のイ・スヒョクはいずれもテレビドラマで活躍する俳優で、映画出演は久しぶり。カウンター役のぺ・ダビンは本作が映画初主演だ。彼らの脇を、ビッグショベル役のテ・ハンホ、チョプセ役のウム・ムンソク、そしてナ課長役のベテラン俳優のユ・スンモクという顔ぶれが固める。

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登場人物のキャラクターがくっきりと描かれるところはいかにも韓国映画らしく、出演者の掛け合いがテンポよく続く。

こんなシーンもある。金のために殺人まで犯すゴヌの魔の手を逃れ、命からがら地下から脱出したピンドリら作業チーム。「平気で人殺しをするあいつは何者だ?」と叫ぶピンドリに、カウンターは「TS精油の代表。数千億ウォンの油田詐欺に遭い、(損失を埋めるために)横領も働いた」と語る。

「あの人殺しが財閥だと!」と憤るビッグショベルに、カウンターは「財閥ではなく、ただの精油会社」と応じる。“金持ちではあるが、財閥ではない”ということか。緊迫した掛け合いの中に、ブラックユーモアを感じる場面である。

印象に残ったことをもう一つ。

本作のテーマ曲として使われたのが、1960年代以降、世界的な人気を誇ったロックバンド、ザ・ベンチャーズの代表曲として知られる『パイプライン』である。

映画のタイトルに引っ掛けたダジャレのような選曲ではあるが、半世紀以上前のエレキギターのテケテケ・サウンドが犯罪娯楽映画である本作の空気感にマッチしている。60代以上の洋楽ファンは思わずニヤリとするだろう。

文:堀木三紀(映画ライター/日本映画ペンクラブ会員)

<作品データ>
タイトル:『パイプライン』(原題:파이프라인)
監督:ユ・ハ
脚本:ユ・ハ、キム・ギョンチャン
出演:ソ・イングク、イ・スヒョク、ウム・ムンソク、ユ・スンモク、テ・ハンホ、ペ・ダビン
2021年/韓国/108分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/日本語字幕:福留 友子/英題:PIPELINE/映倫【G】
© 2021 [CJ ENM, GOM PICTURES, M.o.vera Pictures] All Rights Reserved.
配給:クロックワークス
公開日:2022年2月4日(金)シネマート新宿ほか全国ロードショー
公式サイト: https://klockworx-asia.com/pipeline/

パイプライン

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