仕事内容、給料が全く変わらなくても?

叔母「なるほどねぇ。でも、結局は身売り、ということじゃないの?」のんちゃん「確かに、破産しそうな会社を救うための合併もあるんだけど、事業分野の拡大や競争力の向上のためにするの。新しいことを自分で始めるより、既にスキルや市場を持っている会社と合併したり事業を買ったりする方が、コスパがいいことだってあるでしょ」

叔母「経営者はそういうことを考えるかもしれないけど、働いている側からしたら、やっぱりちょっと嫌ね」のんちゃん「仕事内容もお給料も全く変わらなかったとしても?」

叔母「だって、会社の雰囲気というか、カラーが変わってしまうような気がして。それに、内容が同じって言ったって細かいルールが変わったり、いきなり知らない人が上司になったりするんでしょう。今の職場の空気が好きなんだよね。穏やかで、落ち着いていて。そういうのも全く変わらないのかしら?」のんちゃん「うーん…」

叔母「それに、やっぱり、パートタイマーはクビになっちゃうんじゃないかって…ちゃんと雇い続けてもらえるのかな?のんちゃん、そこんとこどうなの?」のんちゃん「ええっ…考えたことなかったなあ。一体どうなるんだろう」

従業員はM&Aを前向きにとらえる時期に

のんちゃんの体験は今後特別なことではなくなるはず。経済産業省は今後10年間に70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、このうち半数の127万人に後継者がいないと予測している。これを放置すれば廃業により2025年までに約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性がある。こうならないために、経済産業省ではM&Aを通じた事業承継を支援しており、2018年度(平成30年度)の税制改正でも次のような制度を創設している。

株式対価M&Aが容易に 譲渡益の課税を繰り延べ
事業 承継後の株価下落に減税措置 2018年度(平成30年度)税制改正で
M&A減税を実施 2018年度の税制改正で

一方で、のんちゃんの叔母さんが語っている職場環境の変化や雇用継続への不安は、従業員なら誰しも感じるところであろう。現在の制度でも不安解消につながる様々な方策がある。さらに、厚生労働省も労働者保護に向けて動き出している。

国主導で増えるM&A、身近に迫ってくるM&Aに対し、従業員はどうすればいいのか。いたずらに恐れるのではなく、M&Aを前向きにとらえる時期に差しかかっているといえそうだ。

文:のんちゃん(東京大学法学部在学中)