加藤商会は現存する会社ではないが、往時は名古屋港を出入りする外米の8割を取り扱っていたとされる尾張きっての米商社だった。創業者は名古屋財界の重鎮といわれた加藤勝太郎である。
勝太郎は1885(明治18)年に愛知県中島郡大里村(現稲沢市)で生まれ、名古屋商業学校(現名古屋市立名古屋商業高等学校)を卒業し、兵役を経て二十歳を超えた頃に貿易商を志して単身、香港に渡った。中国や東南アジアの国々を見て周り、時計などの商品を買い付けては販売した。
勝太郎は貿易業務の知識・腕を磨き、多くの人脈を得て帰国の途につく。そして地元に戻り、名古屋で外米の取り扱いを始めた...