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「条件付取得対価」で対価の一部が返還される場合の会計処理は?しっかり学ぶM&A基礎講座(58)
2019年1月16日、企業会計基準委員会(ASBJ)から改正企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」などが公表されました。これは「条件付取得対価」で対価の一部が返還される場合の取扱など定めた改正によるものです。
GCと聞くと「ゴルフ倶楽部」を思い浮かべる方がいらっしゃるかもしれません。しかし、財務周辺に関わりを持つ方なら「ゴーイング・コンサーン(Going Concern)」すなわち「継続企業の前提」という意味で使用するケースが多い略語といえるでしょう。
継続企業の前提に関する注記(GC注記)は、企業経営に黄信号が灯ったときに開示される情報です。この注記には具体的にどのような意味があり、また、どのような検討を経て開示されるものなのか。今回はその概要を紹介したいと思います。
継続企業とは、文字どおり、企業が将来にわたって経営を継続していくことを意味しています。それでは、この継続企業の「前提」について、わざわざ開示を行う理由はどこにあるのでしょうか。「前提」という少し格式ばった用語を使用しているのは、その背景に会計理論が関係しているためです。
現実的な意味合いとしては、継続企業であることが、市場において投資家が企業に対して投資するための「前提」でもありますし、金融機関などが融資を行う「前提」にもなっているでしょう。ただし、本来の意味としては、会計の世界において継続企業が「会計公準」(会計における基礎的な前提条件)の一つになっていることを示しています。
もし、継続企業を前提としないのであれば、資産や負債は企業が清算することを前提とした価値で評価するのが適切かもしれません。つまり、金目のモノは売り払い、借金は返せる額だけ返すことを前提とした貸借対照表(バランスシート)が正しいとも考えられるのです。
しかし、企業会計の実務では、設備投資をした場合には取得原価をもとに将来の期間にわたって費用化(減価償却)していくような方法を採用しています。すなわち、継続企業を前提とした会計処理を行っています。
このように有価証券報告書に掲載されている会計情報が継続企業を前提としているがゆえに、その前提に疑義があるような場合には読者に対して注意喚起が必要となります。これがGC注記の役割といえます。
経歴:2001年、公認会計士2次試験合格後、監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)、太陽監査法人(現太陽有限責任監査法人)にて金融商品取引法監査、会社法監査に従事。上場企業の監査の他、リファーラル業務、IFRSアドバイザリー、IPO(株式公開)支援、学校法人監査、デューデリジェンス、金融機関監査等を経験。マネージャー及び主査として各フィールドワークを指揮するとともに、顧客セミナー、内部研修等の講師 、ニュースレター、書籍等の執筆にも従事した。2012年、株式会社ダーチャコンセプトを設立し独立。2013年、経営革新等支援機関認定、税理士登録。スタートアップの支援からグループ会社の連結納税、国際税務アドバイザリーまで財務会計・税務を中心とした幅広いサービスを提供。
学歴:武蔵野美術大学造形学部通信教育課程中退、同志社大学法学部政治学科中退、大阪府立天王寺高等学校卒業(高44期)
出版物:『重要項目ピックアップ 固定資産の会計・税務完全ガイド』税務経理協会(分担執筆)、『図解 最新 税金のしくみと手続きがわかる事典』三修社(監修)、『最新 アパート・マンション・民泊 経営をめぐる法律と税務』三修社(監修)など
2019年1月16日、企業会計基準委員会(ASBJ)から改正企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」などが公表されました。これは「条件付取得対価」で対価の一部が返還される場合の取扱など定めた改正によるものです。