【M&A仕訳】会社分割の会計処理

※この記事は公開から1年以上経っています。
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こんにちは、公認会計士の岡 咲(おか・さき)です。(ペンネームです。会員検索してもこの名前では出てきませんので、悪しからず。)

1.会社分割のスキームについて(取引概要)

会社分割は、一つの会社から一部事業を切り出して別の会社に移転させ、対価として移転先の会社の株式を受け取る取引です。

対象事業の移転先の会社が会社分割により新しく設立される会社の場合、「新設分割」といいます。対象事業の移転先の会社が既存の会社の場合、「吸収分割」といいます。

また、対価としての株式を分割元の会社が受け取る場合を「分社型分割」といい、分割元の会社の株主が受け取る場合を「分割型分割」といいます。

用語法として、「分社型」と「分割型」はどちらがどちらか混乱しやすいので、「会“社”が株式を受け取るから分“社”型」と覚えておき、分社型でないものが分割型、と覚えておくとよいでしょう。

M&Aにおいては、売買対象の事業を吸収分割により買い手企業に吸収させる取引や、新設分割により新会社に移管し、その新会社を株式譲渡により売却する取引などで活用されています。

M&A以外でも、複数事業を運営する事業会社がHD体制に移行する際、HD機能以外の事業部をそれぞれの事業子会社として新設分割により子会社化するなどの組織再編取引に活用されています。

2.会社分割の仕訳の基本ルール

2-1.取得企業と被取得企業の判定

会社分割は株式を対価とする企業結合の一種なので、他の取引類型と同様に、最初に取得企業と被取得企業の判定を行います。判定の方法はすべての企業結合取引に共通ですので、前回までの記事をご参照ください。

2-2.各当事者の会計処理

取得企業の判定ができましたら、それぞれの当事者ごとに会計処理が行われます。
会社分割の場合、登場人物は以下の4通りです。

(1) 分割元の会社(会計基準上の用語で「分離元企業」といいます。)
(2) 対象事業を受け入れる会社(会計基準上の用語で「分離先企業」といいます。)
(3) 分離元企業の株主
(4) 分離先企業の株主

会社分割の場合「新設分割、分社型」「新設分割、分割型」「吸収分割、分社型」「吸収分割、分割型」の4パターンが存在します。

一方、会計処理の方法は、上記の4パターンのどれに該当するかには直接関係がなく、以下の2つのポイントで定められています。

①分離元企業の会計処理
 投資が継続しているか清算されたかに応じて決まります。

②分離先企業の会計処理
 取得、逆取得、共通支配下の取引、共同支配企業の形成のどれに該当するかに応じて決まります。

会社分割の場合、①については、端数調整等のために若干の調整金をやり取りする場合もありますが、原則として対価は株式のみです。よって、投資の継続・清算は、株式交換の被取得会社の株主の処理の項で記載したように、分離元企業において当該会社の株式が「子会社株式」「関係会社株式」「その他有価証券」のいずれに該当することになるか、取引の前後でそのカテゴリにどのような変化が生じたかによって継続か清算かが決まります。

②については、前回までに何度も登場してきた考え方の通りです。まず株式移転の回で開設した手順に従って、分離元企業と分離先企業のいずれが取得企業、被取得企業になるかを判定します。

分離先企業が取得側と判定された場合は取得に該当し、分離元企業が取得側と判定された場合は逆取得に該当します。この時、前回の合併の回で開設した共同支配企業の形成の要件を満たす場合は共同支配企業の形成と認定されます。また、分離元企業と分離先企業が同一の株主に支配されている場合等は共通支配下の取引と認定されます。

それぞれの場合における会計処理は、今までの各種類型における会計処理と共通です。

それでは新設・分社型、新設・分割型、吸収・分社型、吸収・分割型の4パターンごとに仕訳例を見ていきましょう。

岡 咲 (おか・さき)

大手監査法人所属の公認会計士です。ワンオペ育児に奮闘するアラフォーママです。本記事はペンネームで執筆しています。


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