連結会計におけるM&A仕訳を全8回にわたって解説しています。本稿はその第6回目に当たります。連結財務諸表は親会社が企業グループ各社の決算書を合算、調整のうえ作成するものです。つまり、子会社を設立したり、他社を買収して子会社化したりした場合に連結財務諸表を作成する訳です。

それでは、もともと連結財務諸表を作成している企業グループの会社がさらに合併を行った場合、連結会計にはどのような影響を与えるのでしょうか。まずは合併が行われた場合の当事会社単体における会計処理を確認するとともに、連結会計への影響を確認してみましょう。

合併には「吸収合併」と「新設合併」がある

合併が行われた際の個別会計上の仕訳は「【M&A仕訳】合併の会計処理」ですでに紹介しています。少し復習になりますが、連結上の仕訳を考える前提として、まずは合併手続の特徴と個別会計上の処理を確認してみましょう。

合併の類型とは?

合併には「吸収合併」と「新設合併」があります。このうち吸収合併は、例えば既存のA社とB社が合併し、A社が存続会社、B社が消滅会社となるような場合です。これに対して、新設合併は、上記のA社とB社がともに消滅し、合併に際して新たに設立されたC社に資産や負債が承継されるようなタイプの合併を指します。

実務上は吸収合併の形を採ることが多いので、以下では吸収合併を前提に処理を確認していきたいと思います。吸収合併のプレイヤーとしては存続会社、消滅会社のほか、それぞれの株主も存在します。このうち、合併の当事会社といえば、存続会社と消滅会社を指すのが一般的です。

合併比率と合併の対価

合併に関するニュースなどで「合併比率」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。例えば、B社の株式1.5株につき、A社の株式1株を交付するというような割合が合併比率と呼ばれるものです。上場会社同士の合併では、発表された合併比率をもとに理論株価が瞬時に算定され、株式相場がそれに寄せてくるというのがお馴染みの光景です。

合併という語感からは会社同士が合体するというイメージが強いと思いますが、A社が自社の株式を対価としてB社を買ったと見ることもできます。しかも、合併の対価は柔軟で必ずしも株式には限定されません。例えば、現金を対価として合併を行う場合は、まさに対象会社を買ったという表現がしっくり来るのではないでしょうか。

合併の個別会計上の処理は?

ここでは、存続会社となるA社が自社の株式を対価として消滅会社となるB社を吸収合併したケースを前提に、存続会社A社における会計処理を考えてみましょう。なお、A社とB社はもともと資本関係のない会社とします。

会計処理のポイントはB社の資産や負債を時価で受け入れるということです。つまり、B社の決算書における資産や負債の簿価が時価とは異なる場合、時価に置き換えた上でA社の決算書に取り込むことになります。

仮にB社の資産が時価200、負債が時価120、それに対して交付されたA社株式の価値が150(全額を資本金として処理するものとする)である場合、以下のような会計処理となります。

吸収合併における存続会社A社の会計処理>

(資産)200

(負債)120

のれん)70

(資本金)150

B社における資産と負債の時価の差額(つまり時価純資産)は80(=200-120)の価値を持っています。これに対してA社は株式150相当を交付しています。つまり、80の買い物に対して150の代金を支払っているような状態といえます。この70(=150-80)の差額は、合併によって獲得される超過収益力などを期待して上乗せされている対価と考えらえます。そのため、これを「のれん」として計上することになります。