100万円で購入した自動車を決算書に載せる際、100万円という金額で計上することが自然な処理に感じられます。その背景には、対価として支払った100万円がその自動車の公正な価値を表しているだろうという暗黙の理解があります。

それでは、M&Aを実施した場合、受け入れた個々の資産にはどのような金額を付すべきでしょうか。実際、M&Aにおける評価作業は一筋縄でいかないことも多く、時間やコストをかけて、やっと最終的な金額が確定するというケースは珍しくありません。

そうした実務への配慮からM&Aに関する会計基準では「暫定的な」会計処理というものが認められています。以下では「暫定的な」会計処理が一体どのようなものであるのかについて紹介したいと思います。

受け入れた資産などをどのように評価するか

M&Aに関する会計処理は企業結合会計基準に定められています。この基準によると、M&Aが「取得」に該当する場合、受け入れた資産や負債を時価で評価することになります。「取得」というのは、ある会社が他の会社の支配を獲得することを指します。つまり、新たに「支配-被支配」という関係が生じたことを意味しています。

これに対して、すでに「支配-被支配」という関係が生じている親子会社間や子会社同士のM&Aは「共通支配下の取引」と呼ばれています。M&Aが「共通支配下の取引」に該当する場合には、受け入れた資産や負債はそれぞれの決算書に計上されている簿価(帳簿価額)で評価することになります。

PPAと呼ばれる評価作業

このため、M&Aが「取得」に該当する場合には、受け入れた資産などについて改めて評価作業が必要となります。こうした評価作業はPPA(Purchase Price Allocation)と呼ばれ、外部のファイナンシャル・アドバイザリー会社や公認会計士に依頼することもあります。

PPAでは、M&A対象会社の動産や不動産といった有形の資産だけでなく、決算書には計上されていない技術、ノウハウ、ブランド、顧客リストといった無形の資産も公正価値で評価することになります。その作業には数カ月単位の期間を要することもあります。