連結会計におけるM&A仕訳を全8回にわたって解説しています。本稿はその第3回に当たります。前回の「株式譲渡」が会社をまるごと売買する方法だったのに対して、今回のテーマである「事業譲渡」は会社のうち特定の事業に関連する資産や負債のみを売買する方法といえます。

このような事業譲渡が行われた場合、連結会計にはどのような影響があるのでしょうか。早速、事業譲渡を行った場合の連結仕訳を確認していきましょう。

事業譲渡では移転損益やのれんが計上される

事業譲渡が行われた際の個別会計上の仕訳は「【M&A仕訳】事業譲渡の会計処理」ですでに紹介しています。少し復習になりますが、まずは事業譲渡という取引の特徴と個別会計上の処理を確認します。

事業譲渡特徴は?

事業譲渡株式譲渡と比較すると理解しやすくなります。株式譲渡は会社の支配権を示す株式を譲渡するものです。対象会社にとっては単に株主が変わるだけの話ですので、決算書の内容や法人の対外的な法律関係には何の変更もありません。

これに対して、事業譲渡は会社が有する資産や負債をまとめて譲渡する取引ですので、例えば不動産であれば所有権移転登記、債権であれば確定日付のある証書による通知などの債権譲渡手続、株式であれば株主名簿の書換えといった個別の譲渡手続が必要となります。

また、有価証券の譲渡に該当する株式譲渡には消費税がかかりませんが、事業譲渡の場合には、個々の資産について「課税資産の譲渡等」に該当するものであれば、消費税が課されるという点が異なります。

そして、買い手にとって特に重要な特徴は決算書に計上されていなかった借入金、未払残業代、保証債務などの簿外負債や偶発債務が事後的に見つかったとしても、それらが事業譲渡契約に含まれていない場合には買い手に責任が及ばないということです。

事業譲渡の個別会計上の処理は?

このような性格を持つ事業譲渡の会計処理では資産や負債の評価がポイントとなります。例えば帳簿上の価額が諸資産100、諸負債40(つまり簿価純資産60)のA事業を対価120で売却した場合、売り手側の会計処理は下記のようになります。

<売り手の会計処理>

(現金預金)120

(諸資産)100

(諸負債)40

(移転損益)60

つまり、売り手では資産や負債の簿価を減らして対価との差額を「移転損益」として処理することになります。これに対して、買い手側では資産や負債を時価評価して計上する必要があります。仮に諸資産の時価が150(>簿価100)、諸負債の時価が40(=簿価40)であった場合、買い手側の会計処理は下記のようになります。

<買い手の会計処理>

(諸資産)150

(現金預金)120

のれん)10

(諸負債)40

以上のように、売り手側では、固定資産などを売却する際の会計処理のように、譲渡対価と資産や負債の簿価との間に差異がある場合には「移転損益」が計上されます。一方、買い手側では、取得対価と資産や負債の時価との間に差異がある場合には「のれん(あるいは負ののれん)」が計上されます。