上の図は、2001年9月から2018年4月までの「東証REIT指数」の推移です。時系列で見てみましょう。2007年5月に最高値をつけています。米サブプライムローン商品の急上昇(不動産バブル)を受け、海外投資家の資金が急速に入り込んで値段が吊り上がった時期です。そこから凄まじい勢いで下落します。リーマンショックです。2008年に収束しますが、しばらく低迷が続きます。この時期、J-REITの第1次再編が起こりました。スポンサーが破綻するなど、不動産業界は凄まじい打撃を受けたのです。
話題となったのが、ニューシティレジデンス投資法人の破綻。米不動産会社が日本で不動産投資事業を行うために設立しました。保有物件は100を超え、資産規模は2118億円と比較的大規模でした。が、リーマンショックにより新規融資が滞って2008年に民事再生法申請を発表します。上場廃止へと追い込まれました。2009年にビ・ライフ投資法人(現:大和ハウスリート投資法人)と合併契約を締結したというわけです。
この時期、スポンサー破綻などによるリート再編が巻き起こります。そしてその一部が、リートの株価を押し上げることとなりました。キーワードは「負ののれん」です。リートへの投資を考える上で、この「負ののれん」は非常に重要な要素となります。
日本レジデンシャル投資法人のスポンサー、パシフィックホールディングスが2009年に破綻しました。最終的には伊藤忠が新スポンサーとなって、アドバンス・レジデンス投資法人<3269>と合併します。このとき、アドバンス・レジデンス投資法人は割安な株価で日本レジデンシャル投資法人を吸収することができました。それにより、「負ののれん」が340億円超も発生したのです。
「負ののれん」とは何か。キャッシュを伴わない、会計上の利益です。会社を買収する際にプレミアムとして上乗せする「のれん」とちょうど正反対のものです。一般的に会社を買うときには、純資産に一定の金額を上乗せして取得します。株式の取得価格と純資産価格の差額は「のれん」として計上されます。株主資本100億の会社を150億円で買収すると、50億円は「のれん」です。これは費用として、時間をかけながら減価償却されるものとなります。
「負ののれん」は、株主資本より安く株式を取得した場合に発生します。株主資本100億円の会社を50億円で買えたとすると、差額の50億円は利益として計上されることとなります。
利益の90%以上を配当するJ-REITは内部留保がありません。しかしながら、唯一剰余金を作るウルトラCが「負ののれん」なのです。「負ののれん」により、急なテナントの退去や不動産の損切りにより損失が発生しても、分配金の減少にならないというメリットがあるのです。
アドバンス・レジデンス投資法人の他にも、合併により「負ののれん」を得ることになったのは、平和不動産リート投資法人<8966>、日本賃貸住宅投資法人<8986>、インヴィンシブル投資法人<8963>、日本リテールファンド投資法人<8953>、いちごオフィスリート投資法人<8975>などがあります。
ちなみに、「負ののれん」が発生してアドバンス・レジデンス投資法人の株主は恩恵を受けましたが、日本レジデンシャル投資法人の株主は不利益を被ることとなります。
過去、統合したリートの銘柄は以下の通りです。
確定申告が2月16日から始まる。医療費控除の申請をする際、インフルエンザの予防接種は対象外なのでご注意を。