ブランドビジネスのABC 業界35年の“大御所”に聞く(下)

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ブランドビジネス、今後の展望は?

――1980年代~2000年代は、ファッション業界でのライセンス契約やインポート契約も盛んで、ブランドビジネスに活発な動きがあった。今、こうした動きがあまりないのはなぜか?

 「消費者が変わってきた。本当に付加価値があるものを見極めるようになって、より賢くなっているのでは? ただブランドがついているだけのものは、今の時代を生き残ってはいけない。企業側もそこを厳しくチェックしているから、動きが鈍くなっているのかもしれない。ただし、今は飽和状態でも、ブランドビジネスはなくなることはないだろう」

伝統的なライセンス契約からの脱却

――ピエール・カルダン氏がブランドビジネスを始めた1960年代の第1ステージ、ブランドホルダーがマーケティング会社のようになっていった2000年代初めまでの第2ステージ、そしてブランドホルダーが自社で全てをコントロールする現在の第3ステージと移り変わってきたブランドビジネス。今後、具体的にどのような形で残っていくのか。

 「これまでのような伝統的なライセンス契約ではなくなり、株を持ち合うなどビジネス・ファイナンシャル・パートナーとしてリスクを共有した形になる可能性は十分ありうる。その場合ももちろん、哲学やパッション(情熱)、カルチャー(文化)の共有は必要。これが欠けてしまうと上手くいかないだろう」

<ブランドビジネスの変遷>

第1ステージ 1960年代~ ブランドビジネスの創業期。
インポート商品とローカルライセンス商品が共存していた時代
第2ステージ 1990~2005年頃 マーケティングを通して、
ライセンサーとライセンシーの関係がより緊密化
第3ステージ 2006年頃~現在 ブランド・コントロールによる直営店舗の出現。
提携や合弁事業の時代へ

注:櫻庭氏のインタビューを基にM&A Online編集部作成

ブランド、特にファッションブランドは、原点を辿ればデザイナーとお針子さんらの手で作られてきたとても人間くさいものだ。だからこそ、人間同士の繋がりが一層重要で、ビジネス成功のカギを握るのもそこに尽きるのかもしれない。

取材・文:M&A Online編集部

前回の記事はこちら
ブランドビジネスのABC 元シャルル・ジョルダン アジアパシフィックCEOに聞く(上)

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櫻庭 充 (さくらば・みつる)

櫻庭 充(Mitsuru Sakuraba)上智大学卒。1978年 シャルル・ジョルダングループ(本社スイス)入社。アジア地区最高経営責任者(CEO)を経て1990年よりインターナショナルライセンス統括。本社シャルル・ジョルダンホールディングAGの最高経営委員会メンバー、副社長を兼務する。2004年 世界有数のコーヒー関連コングロマリット(複合企業)マッシモ・ザネティグループ(本社イタリア、トレビソ)入社。アジア・南太平洋地域統括CEO。主力ブランド「セガフレード・ザネッティ」を日本で立ち上げた。2014年より海外企業におけるアジア戦略ビジネスコンサルタントとして活動中。


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