M&A契約研究|編集部おすすめの1冊

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識や教養として役立つ本も紹介する。

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『M&A契約研究理論・実証研究とモデル契約条項』藤田 友敬 (編著)  有斐閣刊

M&A契約のあるべき姿とは
ー実務家(弁護士)と研究者が座談会形式で議論

さまざまな経済取引の中でも、その高度な専門性や複雑さ、広範さが際立つのがM&A契約だ。しかも、ビジネス環境は日々変化する。このため、いったん買収価格を合意した後に、クロージング(取引実行)までの企業価値の変動を事後的に反映して価格調整する必要が生じたりする。

M&A契約研究
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本書はそのタイトルが示すとおり、M&A契約のあるべき姿を探求することを主眼とする。M&A契約に盛り込まれる諸条項についての意味、経済的機能を明らかにする試みだ。同種の解説書は少なくないが、実務家(弁護士)と研究者の計9人の座談会形式としたのが最大の特徴。

M&Aの流れは対象企業との秘密保持契約から始まり、基本合意、最終契約、そしてクロージングへと向かう。とくに最終契約を締結した時からクロージングまでは株主総会の開催や独禁法など規制対応の関係で一定期間(ギャップ)を要するため、この期間内に経営に重大な影響を与えるリスク(後発事象)が起きる可能性がある。例えば、大口取引先の倒産、大規模な自然災害もしかり。こうしたリスクの配分を契約にどう反映させるのか。

本書のパート1では株式譲渡契約の一般的な構成に従って、総論/契約の当事者/対価、表明・保証、クロージング/クロージングの前提条件、誓約、契約の解除・終了、補償、雑則の各章を設けた。いずれも冒頭で包括的な説明をし、これにコメントが加えられ、続いて全員による討論が行われる。

300ページを超えるボリュームだが、表面的な解説にとどまらず、本音ベースの議論が行われ、結果、各人の認識の違いが発見できるなど、論点の深掘りに役立っている。座談会形式のメリットを最大限に引き出しているといえよう。

パート2では一連の議論を踏まえ、そのアウトプットとしてモデル契約条項(株式譲渡契約書)を提示している。(2018年12月発売)

文:M&A Online編集部

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