数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識や教養として役立つ本も紹介する。
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メディア買収の野望<上><下> ジェフリー・アーチャー著(永井淳 訳)新潮文庫
実在するメディア王、ロバート・マクスウェル氏とキース・ルパート・マードック氏をモデルにした、スリリングなM&A小説だ。物語はマクスウェル氏がモデルとなったリチャード・アームストロングの自殺シーンで始まり、マードック氏がモデルとなったキース・タウンゼントがライバルの死を知るシーンで終わる。

最初に「結末」を知らされた読者は「なぜ、こうなってしまったのか」を読み進めながら探っていく構成だ。アームストロングはチェコスロバキア出身のユダヤ人で、ナチスの強制収容所から脱走して英国に亡命する。
第二次世界大戦が終わると、アームストロングは詐欺同然にベルリンの新聞社「デア・テレグラフ」の経営権を得てメディア事業へ進出。強引な買収を繰り広げて、欧州にメディア王国をつくる。
一方、タウンゼントは新聞社を経営する父親から強い影響を受けて育つ。校内新聞の編集長選挙で父親から「買収や脅迫に屈しない人間はほとんどいない」と教えられ、有力な編集長候補の弱みを握って立候補を辞退させるという手法でまんまと編集長のポストを獲得する。
「三つ子の魂百まで」というが、アームストロングは詐欺まがいの手法で、タウンゼントは買収や脅迫で、次々とメディアを買収していく。2人とも最初の成功体験から逃れることはできないまま、物語は「破局」に向かう。巨額買収を進めた結果、時を同じくして2人のメディア王国は財政的に破綻に直面する。アームストロングは自殺に追い込まれ、タウンゼントは運よくギリギリで踏み止まった。
タウンゼントはアームストロングの死で、彼が買収合戦によって悪化した財務内容を隠蔽するために自社の年金基金の剰余金を使っていたことを知る。周囲の猛反対にもかかわらず、タウンゼントが「その手があったか!」とばかりに年金基金へ手を伸ばす。タウンゼントの「破滅の予感」をほのめかして物語は終わる。
現実ではマクスウェル氏は経営破綻が確実になった1991年11月に所有する豪華ヨットから転落して水死しているが、事故説が有力だ(自殺説もある)。マードック氏は88歳で今も健在だが、2011年7月にグループ有力紙の「ニュース・オブ・ザ・ワールド」が盗聴や警察の買収などによる不正取材事件を起こし、マードック氏は英下院の調査委員会に召喚された。2012年7月には傘下の英有力紙の経営から退いている。
文:M&A Online編集部
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