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「企業価値経営」|編集部おすすめの1冊

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

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「企業価値経営」 伊藤邦雄著 日本経済新聞出版刊

M&Aを実施するうえで重要な企業価値評価。企業価値をどう把握し、経営分析に活かすかの理論を紹介する1冊だ。本書には大手企業の事例紹介もあるが、データ中心で「補足」の位置づけ。実務書ではなく、あくまで理論書だ。

理論書を「研究者か学生向けで、実際のビジネスに役立たない」と切り捨てるのは早計だ。むしろM&Aの最前線で交渉に当たっている実務家にこそ読んでもらいたい。M&Aの実務は個別の案件ごとに事情が違う。それゆえに「理論は役立たない。しょせんは机上の空論だ」と切り捨てる実務家も少なくない。

企業価値経営

しかし、1件1件の事情は異なっても、まとめて見れば明らかな傾向が見られる。そのメカニズムを探るのが「理論」であり、いわば事象の「大きな流れ」を明らかにする取り組みだ。

優れた実務家は目の前の動きにのみ左右されず、「大きな流れ」を意識して意思決定するという。「理論なき実務家」は、経験と勘だけで勝負する。その結果、M&Aで大やけどを負った企業は枚挙に暇(いとま)がない。

同書は「企業価値を評価する手法や概念が、経営という実践の場でどのような意義を持ち、いかに活用されているのかをわかりやすく解説」したという。

M&Aについての詳細な内容は本書の一部だが、日本企業によるM&Aの特徴や関連法制度改革などの概況を簡易に解説。M&Aによる企業価値創造や買収候補の選定と交渉、デューデリジェンス(事前調査)、PMI(M&A成立後の統合プロセス)、買収防衛策などについて一通り理論的な解説をしている。

理論書だけに内容は体系的に整理されており、初心者でも専門用語をネット検索すれば容易に理解できる。内容の大半は企業価値とその分析であり、M&Aに関心がなくても企業経営や株式投資に興味がある人には極めて有用といえるだろう。(2021年4月発売)

文:M&A Online編集部

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