数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。
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M&Aが企業の成長戦略の一翼を担うようになって久しい。近年は中小企業の後継者問題を受け、M&Aを活用した第三者承継も増えている。企業規模の大小を問わず、M&Aが経営者の“必修科目”となる中、売り手と買い手に役立つ情報を満載したのが本書。
といって難解な専門書の類ではない。秀和システムが誇る人気の「図解入門」シリーズに初めてM&A編がお目見えすることになった。製造業、建設業、卸売・小売業、サービス業の中から50業種を選び、業種ごとの特性を踏まえてM&Aの成功のポイントを解説した。
なかでも業種が多岐にわたる製造業では健康食品、美容雑貨、金型、医療用機器など17業種、サービス業では不動産仲介、警備、クリーニング、居酒屋、インターネット広告など20業種を取り上げた。
M&Aの交渉上の論点は、①承継すべき経営資源の整理②取引価額の決定-の2つに大別される。売り手は対象事業の経営資源を事前に「見える化」して、買い手に説明する必要がある。買い手はデューデリジェンス(資産査定)を通じて経営資源の所在を明らかにし、価値を評価しなければならない。
本書は業種ごとに、「市場動向・経営環境」「ビジネスモデル」「買い手候補となる企業」「売り手のメリット」「買い手の注意点」「M&Aで承継すべき経営資源」「企業価値評価(株価算定)」の7つの観点から多角的かつ簡潔にアプローチしている。
例えば、スーパーマーケット業で「M&Aで承継すべき経営資源」とは何か。基本となるのは店舗の立地条件。競合が同一商圏内に新規出店してこないか、商圏分析を行う必要もある。トラック輸送業であれば、安定した荷主との関係性を基本としつつ、慢性的な人材不足に悩まされている状況からドライバーが承継すべき重要な経営資源となる。
また、業種ごと企業価値評価のベースとなるEBITDA(支払利息・税金・減価償却費の控除前利益)倍率などの参考数値を示しており、M&Aの初期的検討段階で取引価額のイメージを大づかみできるよう工夫している。(2021年6月発売)
文:M&A Online編集部
2021年も引き続きM&A関連本の発刊が相次いでいます。1月から3月の間だけで30冊近くの書籍やM&Aの特集記事を組んだ雑誌が発売されました。