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「海外M&A 新結合の経営戦略」|編集部おすすめの1冊

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

「海外M&A  新結合の経営戦略」 松本 茂著、東洋経済新報社刊

日本企業の成長戦略はグローバル展開を抜きに考えられない。その有力なツールの一つが海外M&Aだ。新型コロナウイルス感染の世界的流行で昨年前半、国境をまたぐ海外M&Aは手控えブームが広がったが、後半から持ち直しに転じ、今やコロナ以前をしのぐ勢いを見せている。

海外M&A 新結合の経営戦略

海外を舞台にした日本企業のM&Aは1985年のプラザ合意後の円高を契機に本格化。今世紀に入り、海外事業拡大の手段として設備投資よりも現地企業の買収を選ぶケースが加速度的に増えている。買収後、撤退や売却が半数近くを占めた海外M&Aの草創期に比べ、近年、成功の割合が高まったとはいえ、まだまだ失敗が後を絶たない。

こうした状況を踏まえ、本書は経営において買収が果たす役割を学術理論をもとに改めて問い直し、買収の成功モデルの提示を試みた。著者がキーワードとして着目したのが本書の副題にもある「結合」。買収の本質的な意味は新たな事業の結合にあるとし、論を進める。

買収の目的や期待する相乗効果に応じて結合型は異なるが、本書では多角化結合、垂直結合、水平結合、混合結合の4タイプに大別。そのうえで、結合型ごとに買収後の組織設計のあり方について深堀りする。

20世紀におけるGM(ゼネラル・モーターズ)の盛衰と、21世紀に勃興したグーグルの経営を、両社が繰り出したM&Aのタイプ(統合型)から分析・吟味しているのは興味深い。また、買収とは異なるが、日産自動車とルノーは支配権のないアライアンスで相乗効果を上げたケースとして注目する。

日本企業の海外M&Aはこれまでシェア拡大を目的とする同業者間の水平結合が主流で、サプライヤーや販売会社を対象に供給連鎖を現地で広げる垂直結合も多い。近年は、自社と補完関係にある事業を買収し、製品やサービスの新たな組み合わせを企図する隣接事業者との混合結合が台頭しているという。

海外M&Aで飛躍した日本企業の事例として、グローリー、ダイキン工業、DMG森精機、日本板硝子、堀場製作所、村田製作所の6社を取り上げた。買収の狙いと成果、組織設計、相乗効果、特徴を浮き彫りにし、実践的かつ示唆に富む内容となっている。(2021年5月発売)

文:M&A Online編集部

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