数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。
「M&Aにおける従業員重視経営の罠」酒井 康之著、中央経済社刊
典型的な成熟産業の一つに数えられる国内のセメント業界。国内需要はピーク時の1990年度の半分以下に減り、長期低落が決定的になって久しい。この間、業界の再編・集約が進み、大手各社は生き残りに向けて海外に活路を求める動きを強めてきた。

本書がフォーカスするのは1990年代前半のセメント業界に起きた2つの大型M&A。一つは業界2位の小野田セメントと6位の秩父セメントの合併による小野田秩父セメントの誕生。もう一つは4位の住友セメントと8位の大阪セメントの合併による住友大阪セメントの誕生だ。奇しくも、いずれの合併新会社も1994年10月に同時スタートした。
小野田秩父セメントは業界首位に立ち、住友大阪セメントは2位に躍進した。一方、日本セメントは首位の座を滑り落ち、3位に後退した。
M&Aを通じてプレーヤーが減れば、業界内の競争を緩和する効果が考えられる。ところが、当時のセメント業界では激しい価格競争が生じた。M&Aで期待される過当競争の解決や収益性の改善をもたらす、いわゆる「暗黙の共謀」が実現しなかったのだ。なぜだったのか? 著者の問題意識はここを起点にする。
価格競争を生じさせた企業はそれまで業界トップにあった日本セメントだったという。
大きな理由の一つにあげるのが本書のタイトルになっている従業員重視経営。従業員の雇用維持を重視する経営を行っている場合には低収益事業への経営資源の投入を行う傾向があり、価格競争への自制が機能しなかったと考えられ、これに日本セメントが当てはまるという。
日本的経営による意図せざる結果を実証的に解明したことが本書の真骨頂であるといえる。
ただ、昨今はステークホルダー(利害関係者)のなかでも、とりわけ株主重視の経営が喧伝されている。従業員重視の経営という企業像を前提とした理論が近年では重要性をもたないという批判があり得ることを承知している、と著者自身も述べている。
当の日本セメントはその後、1998年に秩父小野田セメントに合流した。合併で発足した太平洋セメントの売上規模は2位の住友大阪セメントを3倍以上引き離す。断トツの首位、太平洋セメント誕生後の「続編」も期待したい。(2021年3月発売)
文:M&A Online編集部
サラリーマン向けに「個人M&A」の詳しい内容と実践方法を解説した。著者は企業経営者として生きていくのは、金銭面だけでなく、生きがいややりがいにもつながるため生涯現役で働ける環境を作るべきだと主張する。
企業価値ゼロの会社を引き継いだ著者が、わずか10年で大手ベアリング会社などに同社を103億円で売却するまでに価値を高めた手法や、心がまえ、ノウハウなどがぎっしりと詰め込まれている。
数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。今回は「日米実務の比較でわかる 米国アウトバウンドM&A法務の手引き」を紹介する。
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今回取り上げるのは江上剛著「再建の神様」(PHP研究所感刊)。物語の舞台は倒産の危機に瀕する会津の温泉旅館。銀行員生活に挫折した春木種生は東北新幹線の車中で、再建請負人を名乗る渋沢栄二と偶然出会う。
コロナ・ショック後の企業価値をどう向上していくかというテーマの下、フリーキャッシュフローの創出や投資の判断、株主への還元、資金調達などについて、具体的な事例を紹介しつつ分かりやすく解説している。
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米国や欧州でビジネスと投資関連の取材をしてきた米国のジャーナリストが、多くの関係者にインタビューを行い、アクティビスト(物言う株主)と企業との熾烈な攻防戦に光を当てたのが本書。
有名企業が倒産に至った経緯をまとめたのが本書。信用調査会社である帝国データバンクがまとめた。タイトルに「まんが図解」が入っているが、まんがの部分は少なく、いわゆる漫画本とは趣を異にする。
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未上場会社の事業承継を成功に導くための指南書というのが本書の位置づけで、事業承継の成功事例と失敗事例を数多く紹介してある。
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あまり聞きなれない「カラ売り屋」の活動にスポットを当てた小説で「病院買収王」「シロアリ屋」「商社絵画部」の3編からなる。こんな世界もあったのかとの好奇心とともに、闇の世界の不気味さも伝わってくる。