数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。
「社長、その事業承継のプランでは、会社がつぶれます」 島田 直行 著、プレジデント社刊
「事業承継は、経営者のロマンを形にした、一本の映画のようなものだ。そういった映画をつくり上げるためのシナリオの書き方を提案した」
こう表現する著者は、弁護士として多くの事業承継にかかわった経験から、中小企業の事業承継の本質は「いかに後継者を経営者にするか」にあると言い切る。
このため自社株の譲渡方法や相続税対策、M&Aの流れなどはもちろん、当事者の心理にまで踏み込んだ考察や、経営者の家族も含めた事業承継対策、経営者の老後の生活などにも言及した。多くの具体的な事例を盛り込んでおり、介護に伴う家族間の確執なども取り上げた。
6章構成で第1章の「事業承継に見る、企業の繁栄と衰退の分岐点」では、感情のもつれで壊れる会社や家族などについて触れており「事業承継最大のリスクは、現社長がいつまでも社長であり続けること」と結論づけた。
第2章の「後継者から見れば、バラ色でない事業承継」では、後継者選びで気をつけるべきこと、後継者に求められる資質を取り上げ、後継者に経営手腕を身につけさせるには「失敗経験を積ませること」と助言。
さらに第3章の「トラブルを招かない自社株譲渡の方法」、第4章の「事業承継は、いつか自分が介護される姿をイメージして考える」、第5章の「事業承継の視点から見た、経営者の相続対策」でも、同様に参考になる事例や助言を掲載した。
第6章の「事業承継の選択肢としてのM&Aに見る、経営者の思い」では、買主の他愛ない一言で交渉が破綻することや、会社を売れやすくするための準備、成否を決めるのは売買価格ではないことなどを示した。
著者は、経営者には資金繰りや、取引先、社員との関係で苦労したことが数多くあったはずとしたうえで「映画に何を描き、何を伝えるか、クライマックスをいかに演出するかは経営者次第。事業承継を契機に経営者人生を振り返ってほしい」と訴える。(2021年4月発売)
文:M&A Online編集部
米国や欧州でビジネスと投資関連の取材をしてきた米国のジャーナリストが、多くの関係者にインタビューを行い、アクティビスト(物言う株主)と企業との熾烈な攻防戦に光を当てたのが本書。