「平成金融危機 初代金融再生委員長の回顧」|編集部おすすめの1冊

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

「平成金融危機 初代金融再生委員長の回顧」 柳澤伯夫著、日本経済新聞出版刊

平成時代の前半の十数年間、日本経済はバブル崩壊の直撃を受け、総崩れの様相を呈した。株価と地価が音を立てて下落し、金融機関は貸出金が焦げ付き、雪だるま式に不良債権が積みあがった。

平成金融危機

1989年(平成元年)12月の大納会に3万8916円の最高値を付けた株価は翌90年の年明けから下げに転じ、92年8月にはピーク時より6割以上安い1万5000円を割り込んだ。一方、地価も91年1月にピークを記録した後、92年8月には2割程度の下落となった。平成の金融動乱の始まりだ。

都市銀行をはじめ金融機関が不良債権を初めて公表したのは1993年3月期決算のこと。当初、不良債権問題は個別金融機関の問題ととらえる向きがあったが、やがて日本の金融システム全体を揺るがす事態に発展した。1997年には四大証券の一角をなす山一証券、都銀の北海道拓殖銀行が経営破綻に追い込まれた。

そうした危機的状況の中、1998年10月に発足したのが金融再生委員会。小渕恵三政権下、初代の委員長として担ぎ出されたのが著者だ。委員長に就任したその日の初仕事は日本長期信用銀行の破綻認定。同じ年の12月には日本債券信用銀行の破綻処理にあたる慌ただしさだった。

金融再生委の役割は金融再生法に基づく破綻処理と、早期健全化法に則した金融機関の資本増強に大別される。長銀の破綻処理では国内の中央・三井信託連合を含めた譲渡先候補4グループから米投資ファンドのリップルウッドを中心とするグループを最終的に選定するまでの交渉経緯が詳しく描かれている。

一方、資本増強は主要銀行への公的資金投入をテコに金融再編を促す狙いがあった。日本興業、富士、第一勧業の3行統合、住友・さくら銀行の合併、三和、東海、東洋信託の3行統合、あさひ・大和銀行の統合が次々に実現した。

著者は大蔵省(現財務省)出身の官僚政治家。金融再生委が金融庁に統合(2001年1月)された後は、初代の金融担当相を務めた。

日本発の恐慌を回避するために政・官・財がどう動いたのか、その舞台裏を克明に記録したのが本書。令和を迎えてもなおデフレ脱却が道半ばにある日本経済の来し方を知るうえで格好の一冊だ。(2021年3月発売)

文:M&A Online編集部

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