2016年1-9月「老人福祉・介護事業」の倒産状況

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2016年の主な倒産事例

(有)ハイム(TSR企業コード:922085765、法人番号: 5310002017519、長崎県)は、当初はスーパーマーケット経営会社だったが、その後スーパー事業から撤退し、グループホームの運営を開始した。しかし、業績が低迷するなか不動産賃貸関連で訴訟トラブルが生じ、約2,200万円を一括返済せざるを得なくなり、8月17日に破産を申請した。
(有)すてっぷ(TSR企業コード:712010327、法人番号:6260002013720、岡山県)は、訪問介護からスタートし、最近は通所介護を中心に事業を行っていた。だが、従業員の退職が相次ぎサービスの提供が困難になったため2015年10月に営業を停止していた。その後も事業再開の目途が立たないことから破産を申請し、9月7日に破産手続の開始決定を受けた。

介護報酬改定から1年を経過し、「老人福祉・介護事業」の倒産はことし4月以降、6カ月連続で前年同月を上回っている。特に、2016年上半期(4-9月)累計は62件(前年同期比106.6%増、前年同期30件)と急増している。2016年は月平均8.5件ペースの発生で、このままの水準で推移すると年間100件を超える可能性も出てきた。
東京商工リサーチの調査では、全国の老人福祉・介護事業者3,889社の2016年3月期決算は、「増収増益」企業の30.8%に対し、「減収減益」企業も30.8%と拮抗し、業績の二極化が鮮明に表れた。さらに、「減益」企業は52.0%と過半を占めている。同業他社との競合や人手不足を補うための人件費上昇が収益悪化を招く悪循環に陥るケースも目立っている。

2015年4月の介護報酬改定では、基本報酬がダウンした一方、充実したサービスを行う施設への加算は拡充された。だが、小規模事業者は加算の条件を満たすことが難しいだけに、経営基盤が脆く、経営体力に乏しい小規模事業者への影響は小さくないことを示唆している。今回の報酬改定により体制が未整備の業者がふるいにかけられる一方、新規参入の障壁は高まっている。
2016年に入り、参入企業の準備不足や競合、個人支出の抑制など、様々な要因から老人福祉・介護業界の淘汰が浮き彫りになった。高齢化社会の進行に伴い市場の拡大が見込まれるだけに、今後は新規参入や統合を促すため、補助金や融資支援など政策支援も必要になってくるだろう。

東京商工リサーチ「データを読む」より

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