発足当時は安倍元首相や麻生副総裁の支持を得るために汲々としていた岸田首相だが、衆院選の善戦で状況は一変した。二階前幹事長の事実上の失脚に加えて、甘利幹事長の辞任に伴う3A(安倍・麻生・甘利)の発言力低下で、2012年12月の政権奪還以来続いた自民党の「安倍・麻生・二階時代」が終わり、宮沢喜一政権(在1991年11月~1993年8月)以来の新たな「宏池会時代」に入ることになる。
宏池会は保守本流の一角で、創立者の池田勇人元首相が「所得倍増計画」を成功させたこともあり、経済政策に力を入れてきた派閥だ。通商関係を重視するため外交や安全保障政策は穏健派で、歴史認識問題などで右傾化傾向が強かった安倍政権よりもリベラルだ。
そのため立憲民主党などのリベラル野党が政策で差別化できなかったため埋没し、右傾化傾向が強い日本維新の会が議席を増やした可能性もある。
衆院選の投開票日から一夜明けた11月1日の日経平均株価は、先週末の終値から一時、700円以上値上がりした。岸田首相が総裁選で勝利した9月29日に、日本銀行がほぼ3カ月ぶりとなる上場投資信託(ETF)買い入れで701億円を投入したにもかかわらず、同639円67銭(2.12%)安の2万9544円29銭に急落したのと対照的だ。
これは衆院選での善戦と党内旧体制の影響力低下により、岸田首相が党内の実力者から横やりを入れられることなく、フリーハンドで景気対策を打ち出せるとの期待が高まっているのかもしれない。
岸田首相は11月1日の記者会見で大型経済対策を同月半ばまでに策定し、年内のできるだけ早期に補正予算を成立させる方針を示した。「GoToトラベル」の再開や生活困窮者への給付金などの「成長と分配」を意識した施策も盛り込まれる見通しだ。
10月に設置した「新しい資本主義実現会議」での議論が、岸田政権が推進する景気対策の指針となりそうだ。同会議は11月上旬に経済対策に反映させる緊急提言を出すとともに、2022年春までに新たな経済社会の全体像をまとめる方針だ。
会議の有識者メンバーは以下の通り。翁百合日本総合研究所理事長、川邊健太郎 Zホールディングス社長、櫻田謙悟経済同友会代表幹事、澤田 拓子塩野義製薬取締役副社長、渋澤健シブサワ・アンド・カンパニー社長、諏訪貴子ダイヤ精機社長、十倉雅和日本経済団体連合会会長、冨山和彦経営共創基盤グループ会長、平野未来シナモン社長、松尾豊東京大学大学院工学系研究科教授、三村明夫日本商工会議所会頭、村上由美子 MPower Partners GP, Limited. ゼネラル・パートナー、米良はるかREADYFOR CEO、柳川範之東京大学大学院経済学研究科教授、芳野友子日本労働組合総連合会会長
文:M&A Online編集部
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