「日本再生の切り札」とも言われ、政府も旗を振るスタートアップM&A。フォースタートアップス<7089>は東京都内で会員向けイベント「STARTUP DB Hub vol.6」を開き、同社の志水雄一郎社長がM&A仲介大手でスタートアップM&Aを推進するストライク<6196>の荒井邦彦社長を迎え、そのエコシステム構築について討論した。
中小企業の事業承継型M&Aが中心だったストライクは、スタートアップのEXIT(出口)支援としてのM&Aに乗り出している。その背景について荒井社長は「政府がスタートアップを増やしたり、M&Aによるオープンイノベーションを推進している流れを受け、業界に先駆けて4年前から専門部署を立ち上げて取り組んでいる」と語った。
自ら起業して成長産業支援事業を展開する志水社長は「国内のスタートアップにとって、人もお金も極少の原資。私たちのデータベースを活用して、優秀な人的資源と経営リソースの掛け算で最大化していただきたい。1人で勝つのは難しい。協力して新しい価値を創造していくべきだ」と語った。その上で「ストライクと資本・業務提携したことで、次のソニー、次のホンダを育てたい」と意欲を燃やしている。
スタートアップのEXITについて荒井社長は「IPO(新規上場)のハードルが上がっていることもあり、これからの半年から1年でスタートアップのM&Aは増えていくだろう。イノベーションが進んでいる米国企業との比較で、国内大企業はM&Aの実績が少ない。2021年に経済産業省が『大企業×スタートアップのM&Aに関する調査報告書』を公表し、M&Aを用いたオープンイノベーションを推進している」と、IPOからM&Aへの潮目の変化を指摘した。
志水社長も岸田政権が「スタートアップ育成5か年計画」を掲げていることをあげ、「スタートアップのM&AによるEXITは必ず増える」との見方を示す。海外投資家の動きも活発で「日本のアーリースタートアップへの投資が増えている」(志水社長)という。
荒井社長は「これまではスタートアップに積極投資をするのは、米国か中国の企業という意見もある。しかし、スタートアップの買い手として、日本企業の存在感も出てきた。資金力に余裕のある大企業が積極的にM&Aを仕掛けるようになれば、国内スタートアップの生態系が整ってくる」と期待する。
これから有望なスタートアップの業種について、志水社長は「政府が発表している『骨太の方針』をよく読めば、これからどの分野のビジネスが成長するか分かる」という。
ただし「『骨太の方針』で分かるのは5年先まで、それ以降の状況はさすがに読めない。最も早いIT業界でも、スタートアップのIPOには平均で設立から10年以上かかっている。『骨太の方針』に即したビジネスで短期間のうちに成長を遂げ、より早期に実現可能なEXITであるM&Aを選択する方が確実だろう」との見方を示した。
荒井社長は「確かに成長が期待できる分野で起業する方法はある。ただ、起業家は先行きの予測にこだわらず、好きなことをやりたいようにやれば良いのではないか。投資家は後からついてくる」と話すと、志水社長も「最終的に起業家は、命にかえてもやりたいという強い情熱を持っていることが大切だ」と賛同した。
今後のスタートアップM&Aの展望について、志水社長は「先行き有望な企業を安く買うのではなく、強いチームを作るための大胆な意思決定による案件が増える」と見る。荒井社長も「これから100億円、1000億円クラスのスタートアップM&Aが出てくるだろう。そうなればIPOよりもバリュー(価値)が高いEXITとなる」と予想した。
続く第2部ではbajji(東京都台東区)、サステナブル・ラボ(東京都千代田区)、EX-Fusion(大阪府吹田市)、パルセック(東京都渋谷区)、ベネイノテクノロジーズ(茨城県つくば市)のスタートアップ5社によるピッチがあり、会場は熱気に包まれた。
文:M&A Online
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