ファミマTOB価格に関する地裁の決定にファンドが抗告

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ファミマTOB価格に関する地裁の決定、ファンドが抗告=関係筋

[東京 20日 ロイター] - 伊藤忠商事が2020年に実施したファミリーマートに対する株式公開買い付け(TOB)において、東京地方裁判所が適正価格より300円安かったと判断したことに対し、申し立てを行っていた元ファミマ株主のうち、香港の投資ファンドであるオアシス・マネジメントが抗告していたことが分かった。事情を知る関係者が明らかにした。

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関係者によると、オアシスは東京地裁が当時のファミリーマートの市場株価の平均などを参考に適正価格を2600円とした点について、企業が生み出すキャッシュフローに注目して企業価値を算出するディスカウンテッド・キャッシュ・フロー(DCF)法による評価方法を重視するべきと主張している。

M&Aの実務では通常、DCF法と市場株価平均法を併用して適正価格を算出するが、司法判断では主に市場株価平均法が使われている。オアシスは市場株価平均法に偏重した司法慣行に異議を唱えているといい、今後の司法判断に影響する可能性がある。

ロイターが確認した東京地裁の3月の決定文によると、東京地裁は、1株2300円で行われたTOBでは、ファミリーマートが設置した特別委員会が十分に機能しておらず、一般に公正と認められる手続きにより行われたものではないと指摘。公正な価格とは言えないと判断した。

伊藤忠は20年7月に50.1%を保有していたファミマに対しTOBを実施、株式併合を経て完全子会社化した。ただ、TOBに応募せず、強制買い取りに応じた米投資ファンドのRMBキャピタルなどは、買い取り価格が安すぎるとして東京地裁に公正価格の決定を求め、申し立てを行っていた。ファミマの特別委員会が選任した財務アドバイザーによるDCF法に基づく算定は1株2472─3040円とされており、同委員会は、TOBには賛同しつつも、応募するかは株主の判断に委ねるとしていた。

地裁の判断に対しては、ファミマも5日に抗告し「特別委員会を通じた手続の公正性等を強く主張していく方針」としている。

M&Aの専門家によると、住友商事などによるジュピターテレコムへのTOBを巡って、最高裁が価格の見直しを申し立てた少数株主の主張を退ける決定をした2016年以降、裁判所は、価格設定の手続きが公正であれば適正価格について踏み込まないという認識が広がっていた。今回の地裁決定はその流れを変えるとして注目が集まっている。

オアシスはノーコメント、ファミマは5日の開示を正式コメントとして繰り返した。

(山崎牧子 清水律子)

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