韓国元徴用工問題「解決」で、次に立ちふさがる意外な難問とは?

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韓国主導の賠償金支払いで「一件落着」となるか?(写真はイメージ)

「日韓間で個人の請求権は消滅していない」としていた日本政府

日本企業が韓国に残した資産は、現地に進駐した米軍が接収した後に韓国に譲渡された。韓国政府は譲渡された資産を国有化したり、民間に払い下げたりした。植民地支配を担った旧朝鮮総督府や2373社の民間企業、個人の資産を含め、韓国に残した日本側の資産総額は当時の価値で52億ドル(1ドル=360円換算で1兆8700億円)との推定もある。

本来なら日韓請求権協定により日本政府が補償しなくてはならない。ところが日本政府は1966年に「協定で放棄されるのは外交保護権にすぎないから、日本政府は朝鮮半島に資産を残してきた日本人に補償責任を負わない」(谷田正躬外務事務官=当時)と説明している。

1991年には柳井俊二外務省条約局長(当時)が日韓請求権協定について「個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではない」と答弁し、日本政府が日韓請求権協定に基づいて国内企業や国民に残留資産の補償をする必要はないとの立場を貫いている。

つまり「国家間では解決済みだから、民事訴訟は相手国や相手国の企業を訴えろ」というのが日本政府の見解で、まさにそれを韓国側にやられたのが元徴用工問題なのだ。今回、韓国側が賠償を引き受けて決着すれば、国内で同様の訴訟が起こされると日本政府も何らかの対応を迫られる。

現在の日本政府の見解は「損害賠償請求権についての実体的権利は消滅していないが、これを裁判上訴求する権利が失われた」だ。しかし、それは「権利はあるが行使できない」という詭弁じみた法解釈と言わざるを得ない。戦後補償は韓国人だけの問題ではなく、日本人にとっても「積み残された問題」なのだ。

文:M&A Online編集部

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