伝説の映画が蘇る!『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』

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©2021 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』が公開

今年76歳になる俳優にして映画監督のシルベスター・スタローン。下積み時代を経て自身が脚本を手掛けた1976年の『ロッキー』で一夜にしてスーパースターとなり、アメリカンドリームの体現者となりました。『ロッキー』以降、多少の浮き沈みはありつつも『ランボー』『エクスペンダブルズ』など数々の人気シリーズを生み出しました。

『ロッキー』シリーズを一挙紹介

『ロッキー』一作目では、無名のボクサー、ロッキー・バルボアという当時のスタローン自身と重なるキャラクターがチャンピオンのアポロ・クリードへのチャレンジマッチという機会を得ます。アポロに敗れたロッキーですが、『ロッキー2』では激闘を制し新チャンピオンとなります。そして『ロッキー3』では若き挑戦者との防衛戦をアポロのサポートで凌ぎます。その後、ロッキーがアポロの復讐を誓い、戦闘マシーンとのデスマッチに挑んだのが『ロッキー4/炎の友情』です。

ちなみにロッキーシリーズはその後も続いていて、『ロッキー5』『ロッキー・ザ・ファイナル』のほか、スピンオフシリーズ『クリード』の最新作となる『クリード3』の公開が控えています(2023年公開予定)。

「東西冷戦」という対立構造を背景に

現在も公開中で日本でも大ヒットとなり、興行収入100億円を突破した『トップガン マーヴェリック』。前作に当たる『トップガン』が公開されたのはロッキー4の翌年(1986年)になるのですが、この2作品には共通点があります。

両作品とも当時世界を二分していたアメリカとソ連の冷戦が時代背景に色濃く反映されているのです。米ソのイデオロギー対立による冷戦は、現在の世界情勢とは比べものにならないほどあらゆる面で世界を真っ二つに分断していました。当時、新作を構想していたスタローンは、この東西冷戦を軸にシリーズ初となる悪役を登場させます。それが、ソ連の科学の粋を集めて作られた“戦闘マシーン”イワン・ドラコです。2メートル近い長身に100キロを超える巨体は、まさにスーパーヘビー級の怪物です。

売り出し初戦となったエキシビションマッチでは、(ネタバレになりますが)アポロ・クリードをロッキーの目の前で撲殺するという凶悪さを見せつけます。演じるのはスウェーデン出身の俳優ドルフ・ラングレン。極真空手の有段者であり、奨学金でMITに留学したという“文武両道”を絵に描いたようなキャリアの持ち主で、実際に闘ってもかなりの実力者だそうです。

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そんなドルフ・ラングレン演じるドラコに対し、ライバルにして親友のアポロの敵を討つためにロッキーはソ連に乗り込み、リベンジマッチに挑むというのがロッキー4の主なストーリーラインです。

結果として『ロッキー4/炎の友情』はロッキーシリーズで最大級のヒット作となったものの、あまりにもベタな展開もあってか最低映画を選ぶゴールデンラズベリー賞8部門にノミネート、5部門を受賞するというなんとも不名誉な記録を残しています。

コロナ禍を経て『ロッキー4/炎の友情』から「ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV」へ

前置きが長くなりましたが、ここからが新作紹介のお話です。

2020年に入り、コロナ禍で新作映画が相次ぎ公開中止となったことで、スタローンはロッキー4を改めて見直しました。スタローンは当時のトレンドが今となっては作品のドラマ性を希薄にしていると感じ、再編集に入ります。

結果として91分という上映時間から40分強のシーンをカットし、42分に及ぶ未公開映像を加えた94分の映画『ロッキーVSドラゴ ROCKY IV』を仕上げました。

これだけの大手術を行っても作品が成り立つのですから、いかにロッキー4のストーリー性やキャラクターが強かったのか。それが証明されたと言ってもいいかもしれません。改めて蘇った本作を見ると、スタローンが本当に言いたかったことが何であるかがストレートに伝わります。

とにかくアクションの派手さと勢いで物語を進めていたロッキー4に対し、本作ではドラマ性が非常に深くなっています。その結果、『クリード』シリーズへの道筋が出来ました。

『クリード』エピソードゼロとしての『ロッキーVSドラゴ ROCKY IV』

ロッキーシリーズは『ロッキー5(副題は「最後のドラマ」)』や『ロッキー・ザ・ファイナル』など、“最後”を謳った作品が続きましたが、結局のところ今も続いています。

2015年からはアポロ・クリードの隠し子であるアドニス・クリードを主役にしたスピンオフシリーズが始まり、一作目の『クリード/チャンプを継ぐ男』はロッキーのファンからも高い評価を受けました。

続く『クリード 炎の宿敵』では、なんとイワン・ドラコとその息子のヴィクター・ドラコが登場します。クリードシリーズは男の友情ありきの作風なのですが、アクションシーンが中心のロッキー4と物語のテンションが違い過ぎてクリードシリーズへの繋がりが薄いと感じていました。しかし今回の改編で、ロッキーからクリードシリーズへすんなりと気持ちを移行させることができました。

いわば『ロッキーVSドラゴ ROCKY IV』の伏線がクリードシリーズの”エピソードゼロ”として、ちゃんと機能したということになります。実際にスタローンは、「ロッキーシリーズは(ボクシング映画やスポーツ映画ではなく)人間ドラマだ」と語っています。

新作映画から遡るような形で旧作の価値や作り手のこれまでの作家性の高さが再評価されることは少なくありませんが、旧作の再編集で”新作”としてこのクオリティに仕上げたシルベスター・スタローンという人物は、やはりタダモノではありませんでした。

文:村松 健太郎

『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』
監督・脚本・主演:シルべスター・スタローン
出演:ドルフ・ラングレン、タリア・シャイア、カール・ウェザース、ブリジット・ニールセン、バート・ヤング、ジェームズ・ ブラウンほか
撮影:ビル・バトラー
編集:ジョン・W・ウィーラー ドン・ジマーマン
音楽:ヴィンス・ディコーラ
主題歌:サバイバー
テーマ曲:ビル・コンティ
2021/アメリカ/94 分/5.1ch/ ワイドスクリーン(シネスコ 2.35:1)
配給:カルチャヴィル/ガイエ
公式twitter @rockyvsdrago_jp
©︎2021 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

ロッキーVSドラゴ:ROCKY Ⅳ
©2021 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

村松 健太郎 (むらまつ・けんたろう)

2002年から映画館勤務で業界入り。2016年頃から映画文筆家として活動を開始。脳梗塞を患ったために杖片手に試写室や映画会社を行ったり来たりしています。映画祭の審査員やインディーズ映画の宣伝などもしていますが、興行出身ということもあって、少しでも多くの人の足が劇場に向かってほしいと願う日々です。年間300本の新作とそれ以上の過去関連作を見て回っています。 

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