6月が終わり、2022年の上半期(1-6月)の興行収入成績が明らかになりました。昨年(2021年)は年間で19本の映画が20億円の壁を越えましたが、今年も上半期で10作品が20億円を突破しており、このままのペースだと昨年を超えそうな勢いです。
順位 | 作品名 | 興行収入 |
---|---|---|
第1位 | 『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』(公開中) | 91億円 |
第2位 | 『トップガン マーヴェリック』(公開中) | 76.3億円 |
第3位 | 『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』 | 46億円 |
第4位 | 『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』 | 41.7億円 |
第5位 | 『シン・ウルトラマン』(公開中) | 41億円 |
興行通信社の公表値をもとに集計(2022年7月4日時点)
以下、『SING/シング:ネクストステージ』、『余命10年』、『コンフィデンスマンJP英雄編』『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ) 2021』、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』と続きトップ10を形成、ここまでの作品が興行収入20億円を突破しております。
ちなみに新型コロナウイルスの影響をもろに受けた2020年は、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(404億円)というお化けコンテンツがあったものの、興行収入20億円超えの作品はわずか12本でした。
上半期だけで興行収入20億円以上が10本、10億円以上が16本あること考えると、常に映画館が賑わっている状況ということになりますね。
さて、『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』の興行収入91億円は一見すると凄まじい数字に思えますが、近年の“劇場版コナン”のポテンシャルからすると妥当と言いますか、驚きのある数字ではないです。むしろ、ギリギリのところで100億円に届かないところがもどかしく感じられます。
『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』は50億円の大台突破が欲しかったところですが、確実に合格ラインを越えてきたあたりは、さすがです。
『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』は作品への満足度と日本での“スパイダーマンブランド”の人気の高さを証明する形になりました。また現在公開中の『シン・ウルトラマン』は、庵野秀明監督ということで根強いファンに支えられていることもあり、数字はさらに上積みされるかと思います。
しかし何といっても2022年上半期の最大のサプライズといえば、『トップガン マーヴェリック』でしょう。国内の興行収入は76億円を突破し、世界興収も6月末時点で10億ドルを突破し、世界的なヒット作品となりました。邦高洋低が定着している日本映画市場において実写洋画で興行収入が70億円を超えるのは、2019年の『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(72.2億円)以来のこととなります。
国内では初日3日間で興行収入11.5億円を突破し、日本でのトム・クルーズ人気は陰りをみせません。トムのスターバリューは依然として高いものであり、前作への懐古主義もあって、ある程度のヒットは記録するだろうとは思われておりましたが、36年前の映画の続編というものが、ここまで幅広い世代の観客に受け入れられたということは、うれしいサプライズとしか言いようがありません。目下、米国以上に勢いが衰えず、久しぶりに洋画実写における興行収入100億円突破も見えてきました。
そして、何よりもこのヒットにより映画興行が活気づいたことは言うまでもなく、興収単価を押し上げた要因でもある体感型シアター(4DXやMX4D)で新たな映画の楽しみ方を知ったという声も聞かれます。エンタメの選択肢として“映画の立ち位置”が上がったことは間違いありません。
さて、2022年下半期の公開予定ラインナップを見ると、これまた期待できる作品が並んでいます。”大ヒット”レベルの興行収入50億円突破が期待できそうな作品は、以下の6作品です。
7月15日公開予定『キングダム2 遥かなる大地へ』は前作が57.3億円を記録していることを考えると同程度のヒットが予想されます。最終的に『シン・ウルトラマン』ととともに実写邦画の年間ナンバー1を競う形になるのではないでしょうか。
過去2作が90億円台と80億円台をたたき出している“ワールド”3部作の完結篇である7月29日公開予定『ジュラシック・ワールド新たなる支配者』は今夏のハリウッド映画の大本命と言っていいでしょう。
8月6日公開予定の『ONE PIECE FILM RED』は、漫画『ONE PIECE(ワンピース)』が2022年7月で連載開始25周年を迎えるなど原作の人気はもちろんのこと、映画でも“ONE PIECE FILM”シリーズが常に興行収入50億円前後をたたき出していることを考えると、今回も大台突破は期待できるでしょう。
11月11日公開予定『すずめの戸締まり』は新海誠監督の最新作。『君の名は。』(250.3億円)『天気の子』(141.9億円)の数字を考えると100億円の壁に挑むことになるのかもしれません。ヒロインのボイスキャストに原菜乃華が決まりました。
12月3日公開予定『THE FIRST SLAM DUNK』は人気バスケコミックの映画化作品で、原作者が深く映画に関わり、配給の東映としても勝負作の一本としているので興行収入50億円は狙っているでしょう。東映としては来年1月公開予定の創立70周年記念作品『THE LEGEND & BUTTERFLY』の総事業費が20億円と言われているので、『ONE PIECE』と『SLAM DUNK』でその部分を稼ぎ出したいところですね。
そして、年末にはジェームズ・キャメロン監督のSF超大作『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(12月16日公開予定)が控えています。こちらは興行収入156億円を稼ぎ出している前作『アバター』(2009年公開)の10年後が舞台になるとのことで、大ヒットを念頭に置かれていることでしょう。
さらに、上記ほどのヒットとまではいかないかもしれませんが、9月16日公開予定の福山雅治主演・探偵ガリレオシリーズ3作目『沈黙のパレード』、9月1日公開予定の伊坂幸太郎原作×ブラッド・ピットという意欲作『ブレット・トレイン』、12月16日には16年ぶりの映像化で初の映画版となる『Dr.コトー診療所』といった良作が控えています。どの作品も手堅く、30億前後の興行収入が見込めるのではないかと思います。
筆者の予想通りに進むならば、トータルとして2022年の映画興行は非常にいい数字を出してくれそうです。また、各月ごとにヒット作が満遍なく散らばることで、映画ファンにとっても通年で映画を楽しめる1年となりそうです。
文:村松健太郎(映画文筆屋)/編集:M&A Online編集部
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