「森永ホールディングス」誕生へ 経営統合の効果は?

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【ROE分析】売上高利益率に改善余地

 以下は「森永ホールディングス」と明治ホールディングスの主要な経営指標を比較した表である。

森永と明治の主な経営指標
森永ホールディングス 明治ホールディングス
売上高 7833 12237 億円
純利益 186 625 億円
総資産 5438 8561 億円
純資産 2065 4191 億円
売上高純利益率(a) 2.4% 5.1%
総資産回転率(b) 1.5 1.4
財務レバレッジ(c) 2.7 2.2
ROE(a×b×c) 9.5% 16.1%
自己資本比率 37% 48%
時価総額 5106 13802 億円
PBR 2.5 3.3

財務データは2016年3月期。時価総額、PBRは3月3日時点。

 注目すべきなのは、自己資本利益率(ROE)の数字である。森永の9.5%に対して明治は16.1%と高い。しかし、明治は2016年3月期に約200億円の不動産売却益を計上している。これを除外すると実質のROEは13%程度となる。それでもROEで3%以上の差がある。

 ROEの構成要因を分析すると、総資産回転率は森永が明治をやや上回っており、財務レバレッジは森永の方が大きい。一方で売上高純利益率は明治の5.1%に対し、森永は2.4%にとどまっており、利益率をいかに改善するかがROE向上のポイントとなる。

会計上は森永製菓が乳業を買収?

森永乳業 森永製菓
売上高 6014 1818 億円
純利益 105 80 億円
総資産 3788 1649 億円
純資産 1293 772 億円
売上高純利益率(a) 1.8% 4.4%
総資産回転率(b) 1.6 1.1
財務レバレッジ(c) 3.0 2.3
ROE(a×b×c) 8.4% 11.5%
自己資本比率 33.8% 45.2%
時価総額 2283 2823 億円
PBR 1.8 3.7

財務データは2016年3月期。時価総額、PBRは3月3日時点。

 さらに森永乳業と森永製菓を分けてみると、森永製菓はROEが2ケタに達している一方、森永乳業は8%台にとどまる。この経営効率の差が市場の評価にも反映している。株価純資産倍率(PBR)は森永製菓が3.7倍と森永乳業(1.8倍)の約2倍となっている。時価総額も売り上げ規模の小さい森永製菓の方が大きくなっている。

 経営統合の方式の詳細が明らかになるのはこれからだが、会計上は森永製菓が森永乳業を「買収」する処理をすることになる可能性がある。いわゆる「小が大を飲む」形だ。

 今後の市場環境にもよるが、この場合、森永乳業の時価総額と純資産の差額の約1000億円がのれんとなる可能性もある。20年で償却した場合、年間で約50億円の営業利益を圧迫する要因となる。これを上回る相乗効果を発揮できるかどうかが、経営統合を成功させるうえでカギとなる。

文:M&A Online編集部

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