中小企業庁は、2025年8月5日、同年4月に設置された「中小 M&A 市場の改革に向けた検討会」において、「中小 M&A 市場改革プラン」を取りまとめたことを公表しました。
近年、中小企業の事業承継のニーズの高まりを背景に、中小 M&A の市場が拡大したことに伴い、支援の質が十分ではない M&A 支援機関や不適切な譲り受け側の存在が指摘され、中小企業における M&A に対する不安感が払拭できていない状況を受け、中小企業庁は、「中小 M&A ガイドライン」(2024年8月第3版改訂)や「M&A 支援機関登録制度」(2021年8月)等の取組みにより、M&A 支援機関の質・倫理観の向上や M&A の実務ルールの浸透を図ってきました。そして、今般、中小企業全体におけるさらなる M&A の浸透・実現に向け、M&A 関係者が実施すべき取組み及びそれらを促進するための施策について「中小M&A 市場改革プラン」として取りまとめられました。
本プランでは、今後の施策の方向性として、(1)M&A の譲り渡し側に係る施策、(2)中小 M&A 市場に係る施策、(3)M&A の譲り受け側に係る施策の3つの軸で検討されています。
(1)から(3)の主なポイントとして、(1)の施策においては、M&A に対する不安を軽減するスキームの検討・普及として、譲り渡し側の不安を軽減する観点から、経営者保証の解除等に関する不履行等の契約違反の場合に譲り渡し側の意思で買戻しを可能とする条項を「中小 M&A ガイドライン」の最終契約の雛形に新設すべきとの指摘がなされています。その他にも、(2)の施策において、M&A アドバイザー個人の知識・スキルに係る資格制度の創設であったり、(3)の施策において、小規模案件や個人による承継を支援するファンドへの支援強化等が挙げられています。
今後、中小企業庁においては、本プランの各施策を念頭に、引き続き中小 M&A の普及・促進を図っていく方針であるとのことであるため、具体的にどのような施策が実行されるかを含めて今後の動向に注視する必要があると考えられます。
パートナー 大石 篤史
アソシエイト 相原 海斗