東京証券取引所は、2025年2月4日、「親子上場等に関する投資者の目線」(「本資料」)を公表しました。親子上場については、企業側による検討や開示の内容が投資者の期待する水準に達していない事例が見られると指摘されているところ、本資料は、国内外の投資者との面談で寄せられたフィードバックをもとに、投資者が企業側に対して有している目線と企業側の取組の間にギャップが生じやすい場面を取りまとめたものです。
本資料の主な内容は以下のとおりです。
①親会社に対する投資者の目線として、(1)グループ経営の目線(子会社を保有・上場することが、グループの中長期的な企業価値向上や資本効率の観点から最適な形態かどうか)と、(2)少数株主保護の目線(上場子会社の独立性やガバナンス体制の実効性確保に配慮しているか)の両面から、親会社は、親子上場の在り方を取締役会で継続的に検討し、説明責任を履行すべきことが示されています。その上で、「子会社の独立性」を理由に、親会社が子会社のガバナンス体制の実効性確保に関与しない場合等が、親会社に対する投資者の目線とギャップのある事例として紹介されています。
②また、子会社に対する投資者の目線として、(1)グループ経営の目線(親会社の傘下で上場することが自社の中長期的な企業価値向上や資本効率の観点から最適な形態かどうか)と、(2)少数株主保護の目線(特に独立社外取締役が、構造的な利益相反リスクを監督し、親会社からの独立性やガバナンス体制の実効性確保に配慮しているか)の両面から、子会社は、親子上場の在り方を取締役会で継続的に検討し、親会社とも協議の上、説明責任を履行すべきことが示されています。その上で、子会社の独立社外取締役の選解任プロセスが親会社から独立しているかが不明である場合等が、子会社に対する投資者の目線とギャップのある事例として紹介されています。
③さらに、一定割合の議決権を保有すること等により支配的な関係を有する会社についても、グループ経営や少数株主保護の在り方に関して、親子上場と同様の問題意識が示されています。
本資料は、親子上場等に関して、企業側が投資者側の目線とのギャップを埋めるべく、どのようなアプローチを取るべきかを検討する上で、有用な資料であると考えられます。
パートナー 大石 篤史
アソシエイト 青田 竜
森・濱田松本法律事務所 Client Alert 2025年3月号(第135号)より転載
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「組織」に関する法務デューデリジェンス(DD)での確認事項を解説。主に中・小規模の非上場会社を対象としたDDを念頭に説明します。