M&A仲介のM&A総合研究所(佐上峻作社長)が6月28日に東証グロース市場に上場する。M&A仲介業界として約1年半ぶり、6社目の上場となる。中堅・中小企業のM&A市場が急速に拡大する中、その担い手として仲介会社の社会的使命は一層重みを増している。この機会に、M&A仲介の業界地図を点検する。
M&A総研は2018年10月の会社設立から4年足らずでのスピード上場となる。社長の佐上氏は現在31歳。IT系企業での経験を生かし、買い手候補企業の抽出にAI(人工知能)を応用したり、社内業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推し進めることで、成約期間を短縮化し、仲介件数の増加につなげてきた。
同社の新規上場申請のための有価証券報告書によると、2021年9月期の成約件数は25件。足元の2022年9月期は半期だけで成約26件と、前期実績をすでに上回る。
M&A仲介では、業歴や規模に勝る日本M&Aセンターホールディングス(HD)、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライクが“御三家”を形成する。いずれも現在、東証プライム市場に上場する。
なかでも1991年設立の日本M&Aセンターは30年を超える業歴を持ち、売上高、利益、成約件数で群を抜く存在だ。株式上場も日本M&Aセンターが先陣を切り、2006年に東証マザーズに上場し、翌年東証1部に昇格した(2022年4月に東証プライムに移行)。
これに続いたのがM&Aキャピタルパートナーズで、2013年に東証マザーズに上場(翌年、東証1部)。同社は2016年に、M&A専門業者の草分けとしてその名を知られるレコフ(1987年設立。東京都千代田区)を買収し、業容拡大に弾みをつけた。
ストライクは1997年に設立。1998年に国内で初めてM&A市場「SMART」をインターネット上に開設し、ネット活用に先べんをつけた。上場は2016年(東証マザーズ、翌年に東証1部)で、後発のM&Aキャピタルパートナーズに先を越される形となったものの、上場後も過去最高の業績を安定して更新中だ。
上位3社とは開きがあるが、名古屋が地盤の名南M&A、大阪を本拠とするオンデックが続く。名南M&Aは2019年に名証セントレックスに上場(翌年名証2部、2022年4月名証メインに移行)、オンデックは2020年に東証マザーズ(2022年4月に東証グロースに移行)。
M&A専門業者の形態は仲介会社と助言会社(アドバイザー)に大別される。中堅・中小企業M&Aの大部分は前者の仲介会社によって進められる。売り手と買い手の双方と契約し、交渉にあたる。
これに対し、売り手、買い手のいずれか一方の側に立つのが助言会社で、国内勢ではメガバンク系や大手証券系が中心プレーヤーとなっている。大手企業や海外のM&A案件で売り手側と買い手側の助言会社が交渉の火花を散らす。
実は昨年まで、この助言業務の分野でも専門業者として国内で唯一、GCAが上場(東証1部)していたが、米国投資銀行のフーリハン・ローキーと経営統合したのに伴い、株式市場から退出した。
◎M&A仲介上場6社(売上高、営業利益は各社の※直近決算、単位億円)
社名 | 売上高 | 営業利益 | 成約件数 | 設立 | 上場 |
日本M&Aセンターホールディングス | 404 | 164 | 551件 | 1991年 | 2006年 |
M&Aキャピタルパートナーズ | 151 | 65.7 | 172件 | 2005年 | 2013年 |
ストライク | 90.3 | 34.5 | 151件 | 1997年 | 2016年 |
名南M&A | 13.6 | 2.5 | 56件 | 2014年 | 2019年 |
M&A総合研究所 | 13.2 | 5.6 | 25件 | 2018年 | 2022年 |
オンデック | 7.7 | 0.4 | 18件 | 2007年 | 2020年 |
※日本M&AセンターHD=2022年3月期、オンデック=2021年11月期、その他4社は2021年9月期(ストライクは決算期変更に伴う13カ月決算)に基づく
文:M&A Online編集部
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