これまでこうした半導体やディスプレー向けの素材や生産装置は、韓国の素材・装置メーカーが「サムスンやLGエレクトロニクスといったグローバルメーカーは、日本企業重視で韓国サプライヤーなど相手にもしない」と不満を漏らすほど「日本一辺倒」だった。ところが現在、状況は一転して「内製化」一色に染まっている。
結局は日本の素材・装置メーカーが、自国の「輸出規制強化」のあおりを受けてビジネスチャンスを失うことになりそうだ。しかも、その「火種」は領土問題や貿易摩擦といった国家や国民に実害を及ぼすものではなく、歴史認識問題だけに「勝利して得るもの」はほとんどない。半面、「膠着(こうちゃく)して失うもの」は大きくなりそうだ。
さらには韓国政府も「GSOMIA(日韓秘密軍事情報保護協定)の破棄」という日本政府にとっては手痛い反撃をするなど、圧力に屈する気配はない。日本政府は「東アジアの平和と安定を損なうだけに、米国が韓国に対してGSOMIA延長を強く求めるはずだ」と期待したが、ふたを開けてみれば「日韓のことは両国でよく話し合え」と米国政府にも突き放された。日本外交にとっては「想定外」の事態が続き、打つ手なしの状況だ。
朝鮮半島に対する日本の外交方針は「日本が強く出れば、必ず相手は妥協してくる」という楽観論に基づく「力押し」一本槍で、相手国が強硬に対抗した場合の対応を想定していないようにみえる。事実、ミサイル・拉致問題では北朝鮮から何ら歩み寄りはなく、現在となっては朝鮮半島の和平プロセスに関与できるかどうかも不透明な状況だ。
従軍慰安婦像問題でも、2017年1月に駐韓大使と釜山総領事を帰国させる強硬策に打って出た。が、結局は事態に何の進展もないまま、同4月に2人を復帰させた。外交上の「敗北」である。
今回の輸出規制強化は日本政府の外交失策が、日本経済に大きなマイナスをもたらすことを浮き彫りにした。事に成り行き次第では、今まさに日本の半導体・ディスプレー向け素材・装置メーカーが直面している「危機」が、他業種にも広がることになりかねない。
文:M&A Online編集部