M&Aで生じたのれんについて日本では20年以内の期間にわたって償却することになっています。これに対して、IFRS国際財務報告基準)では、のれんの償却を行いません。そのため、のれんの償却の有無は日本基準とIFRSとの間の重要な差異の一つとなっています。

ところが、ここに来てIFRSでも近い将来のれんを償却するようになるのではないかという憶測が飛び交うようになっています。そこで、今回は日本基準とIFRSにおけるのれんの会計処理の違いについて紹介したいと思います。

のれんの償却に関する議論が再燃?

IFRSでものれんを償却する方向になるのではないかという論調が見られるようになったのは、IFRSを制定する団体であるIASB(国際会計基準審議会)が、のれんの償却の要否について議論を始めることを2018年7月に正式決定したためです。

特に日本では、IASBのフーガーホースト議長が、日本経済新聞社のインタビューに答える形で、のれんの減損についての企業判断が楽観的になりやすく、損失計上のタイミングも遅いという点などに言及した記事が掲載されたことも契機になっています(2018年9月13日18:00日本経済新聞電子版)。

ただ、こうした議論は長年行われてきたものであり、いまに始まったものではありません。今回、IASBでは償却の要否について2021年にも結論を出すとされていますが、償却不要という結論に落ち着く可能性も多分にあります。現にこれまでも償却賛成派と反対派の議論は度々なされてきたという経緯があります。

日本基準とIFRSでは会計処理にどのような違いがあるか

日本基準では、のれんが発生すると、一旦は資産に計上するものの最長20年で償却することになっています。仮に20億円ののれんが発生し、最長の20年で償却した場合でも毎年1億円の利益押し下げ要因となります。これは企業の業績に与える影響としてはかなり大きいものです。

これに対して、IFRSではのれんの償却を行いません。そのため、積極的にM&Aを展開する企業ではあえてIFRSを採用することも一つの選択肢となります。ただし、IFRSでは償却を行わない代わりに毎年のれんに対して減損テストを行います。減損テストというのは、減損損失が発生していないか計測することを指します。

日本基準でも、のれんを含む固定資産全般に対して減損会計が適用されます。しかし、減損損失を計測する前に、減損の兆候の有無を判定し、減損の兆候がなければ、減損損失を計測するという作業をしなくてよいという構造になっています。

つまり、日本基準では減損の兆候判定というワンクッションを挟んでいる分、IFRSの減損テスト方式のほうが減損損失を計上する機会が増えることになります。