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6月株主総会シーズン、株主提案の「賛否」はどうだったのか?

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北越コーポレーションの東京本社(左)とダイドーリミテッドの本社(いずれも都内)

3月期決算上場企業の定時株主総会が6月末をもって終了した。その数は全上場企業のほぼ6割にあたる約2260社。このうち、物言う株主(アクティビスト)などから株主提案があった企業は90社を超え、過去最多となった。株主提案への賛否はどうだったのか、点検してみる。

北越、香港オアシスの社長解任案否決

製紙大手の北越コーポレーションの株主総会では岸本晢夫社長の代表取締役解任議案が反対多数で否決された。解任議案を提案したのは北越コーポ株の約20%を保有する香港投資ファンドのオアシス・マネジメントだ。

オアシスの提案に約21%を持つ筆頭株主の大王海運(愛媛県四国中央市)が同調したことから採決の行方が注目されていたが、北越コーポによると、両者を除く株主の99%以上が議案に反対したという。オアシスは北越コーポに対し、持ち分法適用関連会社の大王製紙との経営統合を求め、社長在任16年に及ぶ岸本氏の長期政権をガバナンス(企業統治)上、問題があるなどと主張していた。

総会にはオアシスが社長解任議案をはじめ5議案、大王海運も取締役5人選任など2議案を提案し、いずれも退けられた。一方、会社側は大王海運を念頭に導入した買収防衛策について、株式買い増しなどがあった場合、取締役会の決議だけで発動できるようにする議案を提出し、賛成多数で可決した。

北越コーポは総会での決議事項の内容を開示する臨時報告書を7月1日にも提出するとみられ、この中で会社、株主側双方の議案に対する最終的な賛成割合が明らかになる。

熊谷組、戸田建設も株主提案にノー

オアシスは物言う株主として、日本企業に今最も警戒される海外投資ファンドの一つとされている。

準大手ゼネコンの熊谷組には剰余金処分案に関する株主提案を行った。2024年3月期の配当金を会社が予定する130円から160円に引き上げるよう求める内容だったが、否決された。オアシスは熊谷組株の10%強を保有する大株主。昨年の株主総会では株主還元策として最大237億円の自己株取得を提案したが、賛成多数を得られなかった。

同じく準大手ゼネコンの戸田建設の総会では、米投資ファンドのダルトン・インベストメンツが最大336億円の自己株取得を要求。会社側は成長投資の財源を損ない、中期的成長と企業価値の向上を停滞させることになるとして反対し、多くの株主も会社の主張に賛同した結果、ダルトンの株主提案は否決された。

SC、8社への株主提案の結果は?

6月の株主総会で8社に対して株主提案を行ったのが国内投資ファンドのストラテジックキャピタル(SC、東京都渋谷区)だ。相手企業の顔ぶれは東亜道路工業、ダイドーリミテッド、大阪製鉄、淀川製鋼所、文化シヤッター、日産車体、極東開発工業、京阪神ビルディング。

大阪製鉄に対しては、親会社の日本製鉄と親子上場にあることから支配株主と一般株主との利益相反リスクを指摘。総会では日本製鉄への預け金・貸付金に禁止を求める定款変更や、特別配当の実施を求めた。

京阪神ビルディングの総会では修正PBR(含み損益修正後の株価純資産倍率)1倍以上を目指す計画の策定と開示に関する定款変更などを提案。ストラテジックは2020年、京阪神に1株1900円で敵対的TOB(株式公開買い付け)を実施した。結果は不成立に終わったが、京阪神はこの時の買付価格を上回る株価を実現できていない。

ストラテジックが8社に提出した議案数は合計23件を数えた。賛否はどうだったのか。

唯一、可決されたのが衣料中堅のダイドーリミテッドに対する取締役選任議案だった。ストラテジックが推す6人の取締役候補のうち、元オンワード樫山社長の大沢道雄氏ら3人の選任が承認可決された。

英投資ファンドのパリサー・キャピタルは京成電鉄に対して、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド株の一部を売却し、現在21%の保有比率を15%未満まで引き下げるとする定款変更を提案。京成が保有するオリエンタルランド株の時価総額は約1兆7000億円と京成の時価総額の2倍近くに達しており、株主還元や成長投資によって、そのねじれを是正すべきとの主張だったが、退けられた。

気候変動対策で定款変更の提案も

トヨタ自動車では、欧州の投資機関から気候変動政策に関する活動について定款変更の提案があったが、否決に。三菱UFJフィナンシャル・グループ、日本製鉄などでも同種の環境関連の提案があったが、反対する会社側が支持された。

日本製鉄は「気候変動対策などの特定の経営課題に関する目標の策定・公表といった個別具体的な事項を定款に定めることは適切ではない」としている。

三井住友信託銀行の調べによると、今年6月の株主総会で増配や自己株取得による株主還元や、取締役選解任などの株主提案を受けた上場企業は91社と過去最多だった。

東京証券取引所によるPBR1倍割れの解消要請に象徴されるように、上場企業が資本コストや株価を意識した経営への対応を強く求められる中、投資ファンドをはじめとする物言う株主と向き合う場面が今後、一層増すことになりそうだ。

資本コストや株価を意識した経営への対応を求める東証(東京・日本橋兜町)

文:M&A Online

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