アウトソーシング大手のトランスコスモス<9715>は、農機や鋳鉄管などの大手クボタ<6326>の子会社でシステム開発を手がける中国の久保田信息系統(蘇州)有限公司を子会社化した。
構造改革によって業務効率を向上させたいクボタと、中国でのシステム事業を拡大したいトランスコスモスの思惑が一致したもので、トランスコスモスによる企業買収は2015年のオンラインショッピング「藤巻百貨店」運営のcaramo以来(適時開示情報)となる。
今後、トランスコスモスは久保田信息系統が担っているクボタグループの中国IT事業を引き継ぐとともに、久保田信息系統が手がけている統合基幹業務システムの改修や保守などの新しい事業を取り込むことで、中国ビジネスを拡大する。
同社の2024年3月期はコロナ関連業務の反動減や中国EC(電子商取引)事業の需要減少などに加え、今後の成長に向けた先行的な投資を実施した影響などもあり、減収減益を余儀なくされた。
2025年3月期については「合理的な算定ができない」として業績予想を公表していない。久保田信息系統のグループ化は、業績反転の糸口となるだろうか。
発表年 | トランスコスモスが2010年以降に適時開示した主なM&A |
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2010年 | 子会社のダブルクリック、バナー広告配信事業を米グーグルへ譲渡 |
2010年 | 音楽配信事業のリッスンジャパンを譲渡 |
2015年 | MetroDealからASEAN地域向けのECプラットフォーム事業を取得 |
2015年 | オンラインショッピング「藤巻百貨店」運営のcaramoを取得 |
2022年 | 老舗通販ブランドの「日本直販」事業を譲渡 |
久保田信息系統は、2012年2月の設立で、クボタをはじめ中国のグループ会社向けにシステム開発やシステムの運用、保守、統合基幹業務システムの改修、データセンターの運用などを行っている。
一方、トランスコスモスはコールセンターやデジタルマーケティング、ECサイトの構築、運用、BPO(業務プロセスを一括して専門業者に委託する仕組み)などを手がけており、世界の30以上の国と地域で事業を展開している。中国では1995年に天津に設立したシステム開発子会社で、設計や開発、システムテストなどを手がけている。
これに久保田信息系統の子会社化によって、統合基幹業務システムの改修などの新たな事業が加わることなる。
トランスコスモスの2024年3月期は売上高3622億100万円(前年度比3.1%減)、営業利益は114億7400万円(同50.7%減)だった。
アウトソーシングサービス事業で新規受注が増加したものの、コロナ関連業務が振るわなかったのをはじめ、中国EC事業の需要減少などもあり、減収を避けられなかった。
利益の方は先行投資により営業利益が半減したのを受け、経常利益、当期利益ともに36%~40%の大幅減益となった。
M&Aについては、2010年以降の適時開示情報では、主な案件は5件で、このうち2件が買収、残り3件は譲渡だった。
2015年以来となる企業買収の影響は吉とでるだろうか。
文:M&A Online記者 松本亮一
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