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どうにも不可解な「さが美」のTOB

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  正直に言うと本誌は、日本のいわゆる「再生ファンド」というものは官民を問わずあまり信用していません。何か狭い特殊な世界の中だけで不明朗な談合のようなものが行われており、あまり経済原則で物事が進んでいるとも思えないからです。

 じゃあ海外の「再生ファンド」ならいいのか?というと、これも同じような不明朗で「ぼろ儲け」だけが海外に移転されてしまい、もっととんでもない話が多くなります。

 本日の話題はそんな不可解な「さが美」のTOBについてです。

 9月1日に経営統合を終えたばかりのユニー・ファミリーマートホールディングスですが、8月17日に旧ユニーがその53.8%(議決権ベースでは55.4%)に相当する2199万株を保有する着物販売全国チェーン「さが美」を、「再生ファンド」のアスパラントグループに売却すると発表していました。

 総発行株式の3分の1をこえる株式移動は、すべての株主に等しく売却機会を提供するためTOB株式公開買い付け)を行う必要があり、そのTOB価格が1株=56円、買い付け期間が8月18日~10月11日に設定されていました。

 発表当日である8月17日の株価が80円だったので「ほかの株主が応募できない安値TOB」となりますが、「さが美」も旧ユニーも同日にこのTOBへの賛同を公表しています。また旧ユニーはこの安値TOBに全株応募し、さらに「さが美」に対する34億円の貸付債権のうち16億円を放棄するとも公表しています。

 「さが美」の2016年2~8月期の純利益は2億8800万円で、同年8月現在の純資産は49億円あります。これに16億円の債務免除益が加算されるため純資産は65億円となるはずで、自社株を除いた1株あたり純資産は164円となります。繰り返しですがTOB価格は56円です。

 つまりアスパラントは65億円の純資産のある、一応は利益の出ている、依然として東証1部に上場している「さが美」の経営権を、わずか12.3億円(56円で2199万株)で掌握することになります。

 一応は「再生ファンド」でも常識であるはずの全株取得も上場廃止も行なわず、いつでも資本市場から資金調達する選択肢も(もちろん市場で売却する選択肢も)維持したままとなります。

 別に「やっかむ」つもりはありませんが、本誌でも「大儲け」ができてしまいそうな「おいしい買収(それとも企業再生?)」となります。「さが美」の株価は9月28日に206円の高値となりました。

 まさに冒頭で書いた不明朗な談合の結果のようですが、さすがに「再生ファンド」の中でも異論があったようで、ニューホライズンなる「再生ファンド」が9月27日に買収価格を1株=70円、さらに9月30日に90円まで引き上げ、しかも16億円の債権放棄を求めないという「割合まともな」対抗案を用意していると報道されていました。

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