自らが育てた経営陣に会社を承継させようと、MBOを考える未上場企業のオーナーは少なくないだろう。しかし、実際に活用するには資金調達をどうするかというハードルもある。果たして事業承継にMBOを使えるのだろうか。今回は、未上場企業におけるMBO(マネジメントバイアウト)について解説する。
前回紹介したMBO指針は上場企業でTOB(株式公開買い付け)を伴うMBOが対象である。未上場企業におけるMBOは視野にない。
単純に未上場企業のMBOが社会的に取沙汰されることが少ない為というのみならず、そもそも未上場企業においては、少数株主を別にすると、上場企業ほどには株主の保護の要請が強くないためだ。
未上場企業においてはたいていオーナー社長が誰よりも会社の情報を有している。加えて、株式が非公開である以上、誰かに売却を強制されることもない。価格決定においても、MBOそのものに関しても、オーナー社長がイニシアチブ(主導権)を持っている。そのため、上場企業における非公開化を伴うMBOのように株主が一方的に弱い立場に立たされることがない。
■未上場企業、メリット乏しく
それでは未上場企業にはMBOが馴染むかというと、一概にそうは言い難い。
上場企業が裁判沙汰になってまで行うMBOだが、対象会社にとっては上場維持コストの削減や、株価の変動を気にせず中長期的な経営戦略を実現しやすいこと、株主にとってはMBOプレミアムの価値を享受できるなど、それ相応のメリットがある。
対象企業 | 経営陣 | 株主 | |
---|---|---|---|
メリット | ・上場維持コストの削減(上場企業) ・株価の変動を気にせず中長期的な経営戦略が実現可能(上場企業) ・経営陣への事業承継 | ・少ない手元資金での経営権の獲得 | ・プレミアムとして、MBOにより実現できる価値の教授(上場企業) ・創業者利潤の実現(未上場企業) |
デメリット | ・資金調達の幅が狭まる(上場企業) ・MBOに際する資金調達の弊害 | ・ファンド等と合意した事業計画を達成できない場合、経営方針の見直しも | ・相対での交渉となるため、株価に疑問(未上場) |
一方で、未上場企業においては、MBOのメリットは決して多くはない。自らが育てた経営陣が会社を承継出来るという点に関しては魅力を感じるオーナーも少なくないだろう。では、そのメリットと比してデメリットはどれほどか。