TOBの価格は色々な面で論点があります。今日は、「善管注意義務(ぜんかんちゅういぎむ)」と「のれん」についてお話しますね。なにやらちょいむずの予感?!
まずは買い手側の経営陣の「善管注意義務」からいきます。
例えば公開買付価格が、仮に「明らかに高く、買い手会社に損害を与えた」となれば、買い手側の経営陣が買い手側会社の株主に損害賠償請求などをされる可能性はあり得ます。
前回ご紹介した「イオンディライト<9787>のプレスリリース 」には、こんな内容が記載されていました。
『独立した第三者算定機関としてのファイナンシャル・アドバイザーである野村證券株式会社に対し、対象者の株式価値算定を依頼し、平成 27年10月27日付で株式価値算定書を取得しました。』
野村證券の算定
市場株価平均法 332円から336円
類似会社比較法 262円から585円
DCF法 697円から993円
一方、買収される側の白青舎は、大和証券に株価算定を依頼しています。
大和証券の算定
市場株価法 332円から336円
類似会社比較法 437円から565円
DCF法 723円から832円
このような場面での株価というのは、一般株主同士の売買ではなく、企業支配の場面なので市場株価法(マーケットアプローチ)だけでは各関係者を説得できるには足りず、類似会社比較法(これもマーケットアプローチのひとつ)やDCF法(インカムアプローチ)などの複数の方法が採用されることが多いです。
もちろん、「本当に正しい株価」なんて誰にも分かりませんし、それを算出する手法はまだ開発されていません。将来的には開発されるんでしょうか・・・。(今回は企業評価の手法についてふれませんので、別のコラムを参考にしてくださいね)
ですから上記のように、野村證券も大和証券も「ずばりコレ!」という株価はピンポイントでは出せないのです。