MBOマネジメントバイアウト=経営陣による買収)が話題になっている。ファンドによる上場企業の非公開化が再び活発になり始めているほか、MBO後に再上場するケースも後を絶たない。MBOは経営陣が買収価格を操作できるから、株主は十分なプレミアムを享受できず不利益を受けやすいとも言われるが、本当だろうか。株価データを元に検証する。

 1月1日、東京証券取引所が公募していたMBO後の再上場時における上場審査に関するパブリックコメントが締め切られた。

 株主の利益を最大化する義務を負う経営陣が買付者として参画し、会社を買収するMBO。その構図は否応なしに利益相反構造を内包している。加えて上場企業においては、IR(投資家向け広報)やプレスリリースでしか経営を関知できない一般株主と、ともすれば業績情報さえ操作できてしまう立場の経営陣には情報の非対称性もある。

 かつ、上場企業においては非公開化を伴うMBOがほとんどであり、二段階買付によるスクイーズアウト(全部取得条項付き種類株式株式交換を利用して少数株主を締め出す手続き)を伴う場合、MBOに反対する株主の立場は弱いものとなりやすい……と言った理由から、かねてより世間はMBOにはやや厳しい目を向けており、政府も注意を払っていたようだ。近年は、MBOで非公開化をした会社が再度上場を果たすケースが増えて来た為に冒頭のパブリックコメントの公募に至る。

 一般的にも、MBOにおいては経営陣が強く、安値で会社を買い叩くと言った印象を抱いている人は少なくないだろう。

 果たして本当にそうなのか。

 経営陣の義務は株主の利益を最大化することである。株主の利益を見るのに一番わかりやすい指標はやはり株価であろう。TOBにおけるプレミアムという観点からMBOを分析してみる。

<グラフ1>

 グラフ1は、MBOにおけるTOBTOB全件、MBO以外のTOBの平均プレミアムの推移を比較したものである。プレミアムは公表日前3カ月平均株価に対するものを採用しており、以下の文章における「プレミアム」は一貫して3カ月平均株価に対するプレミアムを指すので注意されたい。

 グラフ1であるが、少々出来すぎているほどに、MBOにおけるプレミアムは群を抜いている。

<グラフ2>

 グラフ2は、グラフ1よりディスカウントディールを除外したものだ。

 ディスカウントディールとはマイナスプレミアムがつくTOBを指す。例えば、あらかじめ話をつけた特定の大株主から一定数の株式を買付ける目的でTOBを行う場合、一般株主が応募してくると買付比率が按分されてしまい、大株主は目標の株数を売ることが出来ない。これを防ぐために一般株主が応募しないであろうマイナスプレミアムを付けた価格で買付を行うのがディスカウントディールだ。

 ディスカウントディールではある程度上場を維持することが前提となるため、非公開化を伴うTOBの多いMBOと比較するならこれは除外しておく方がフェアかもしれない。さて、このディスカウントディールを除外したプレミアム平均値では、2012年~2014年、MBOの平均値よりもTOB全件/MBO以外のTOBの平均値が上回る。