M&Aによるシナジー効果がどれほど生みだされるのかがポイント

事業再生やM&Aを行う場合、対象となる企業の価値を把握することが不可欠となる。各種デューデリジェンスを経ても、企業の実態を正しく判断することは容易ではない。そもそも企業価値とは何なのか、また、その価値をどのように計ればいいのか、企業再生やM&A案件で豊富な経験を持つ、髙野総合会計事務所の小宮孝之氏に聞いた。

――M&Aでは企業価値評価が鍵になります。上場企業の場合は、株式市場における株価により算定する方法もあるが、中小企業の評価はどうするのでしょうか。

 結論から言えば、「企業価値を正確に計る方法」は存在しないと言っても言い過ぎではありません。仮にそのような方法があったとしても、データを集め、分析するためには膨大な手間と時間が掛ります。さらに、現時点での価値を何らかの方法で正確に計る方法ができたとしても、事業環境の変化に伴い、その価値は刻々と変化します。

 もちろん、貸借対照表や損益計算書の実態を調査する「財務デューデリジェンス」や、事業を取り巻く外部環境・内部環境などを調査する「事業デューデリジェンス」なども行います。ただし、実態を把握する力に長けた人間が担当しても、限られた時間の中ですべての完全な情報が入手できるとは限りません。

 上場企業の場合は、株価も評価の一つではありますが、これも企業価値を正確に示しているわけではありません。企業の経済的価値は、絶対的なものではなく相対的なものだからです。

 M&Aではセルサイド(売り手)は少しでも高く売りたいと考えますし、バイサイド(買い手)は逆に、安ければ安いほどいいわけです。バイサイドの企業は自社にとって価値があると考えれば高い値段を付けますが、価値がないと考えればオークション(入札)にも参加しないでしょう。

 実際にあった例ですが、とあるサービス業のM&Aでは、買い手の提示額が5億円から20億円ぐらいまで大きな幅が生じたことがありました。もちろん買い手企業はその業態を知り尽くしたプロフェッショナルです。それでもこのような幅が出るのです。「M&AではPMI合併後の経営統合)が大切」と言われますが、まさに、M&Aによるシナジー効果がどれほど生みだされるのかの見積もり方によって、これほどの差が生じてくるわけです。(続く)

取材・文:M&A Online編集部

■第2回:この会社を買いたいという強い思いと決断力で入札額を提示する企業も
■第3回:M&Aに必勝法などない