日本でいちばん小さな銀行はどこか。「小ささ」では資産規模や店舗数、行員数など様々な捉え方があるが、資産規模で言うと、筆頭は地元で「きょうぎん」と呼ばれ親しまれている佐賀共栄銀行である。
2022年度末の同行の総資産は約2643億円。同年度末、日本の銀行125行のうち124位。最下位は、2021年5月にふくおかフィナンシャルグループ傘下、金融庁の分類の「新たな形態の銀行」として開業した「みんなの銀行」で、123位は長崎銀行の3,171億円。純粋にリアルに「銀行」としてイメージできる金融機関としては、「最下位の資産規模」が続いている。
だが、それだけで“弱小銀行”と決めつけるのは早計だ。小粒だが、ピリリと辛い一面も持っている。
その一例が、貸出金利の利回り。2022年度末は2.18%で、2022年度末の貸出金利息収入は42億5000万円。利回りとしては地銀で1、2を争う高水準を堅持している。いわば、「きちんと貸して儲けている」銀行なのである。
その佐賀共栄銀行に、これまで大きなM&Aはない。1949(昭和24)年に佐賀無尽として創業し、2年後の1951年に佐賀相互銀行に改称した。そして、1989年に佐賀共栄銀行として普通銀行に転換する。
現頭取の二宮洋二氏は、2021年6月の週刊『エコノミスト』Onlineのインタビューで、行員の業績評価から「融資額」を外したと語っている。多くの銀行では、大きな額の融資を実行していることが各行員の営業成績、業績評価に影響するものだ。額が多ければ、それだけ利息収入は増える。
だが、昨今の低金利政策はそれが叶う状況にはなかった。だからこそ、大きな融資額を争う低金利競争は大手行に任せて手を引き、従来の日本政策金融公庫や信用金庫の融資先に進出し、それら金融機関と一緒になって地域金融を支えようと舵を切ったことになる。
額が小さくても、金利がとれるところへの融資は、「多少、金利が高くついても、今借りられないと、会社をたたむしかない」と考える企業であることも多く、それは銀行にとって貸し倒れの可能性もあり、“ミドルリスク”を抱えることになる。
一方で、佐賀共栄銀行では、この5年ほど店舗数や行員・役員の削減を行うをなど、徹底的なリストラや事業のスリム化・効率化を推進してきた。特に2021年度には店舗数を34店舗から20店舗に削減、来店客数も2015年度の28万827人から16万6118人へと約4割も減らしている。
佐賀県には佐賀銀行という有力地銀がある。これを横目に、佐賀共栄銀行は佐賀銀行はもちろん他の地銀・第二地銀とも異なる戦略で、金融再編に挑んでいる。
文:菱田秀則(ライター)
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